「シャンタル・アケルマン映画祭2024」6月19日開催 映画祭初上映作品3作含む15本をラインナップ、来日ゲストのトークも
映画.com / 2024年5月23日 18時0分
■「アンナの出会い」(1978)
最新作のプロモーションのためにヨーロッパの都市を転々とする女流映画監督を描く、アケルマンの鋭い人間観察力が光る一本。知人たちとの接触を挟みながら、孤独に彷徨う主人公アンナの姿と、日常に溶け込みはしない断片的な空間と時間とを通して、アイデンティティや幸福の本質が絶妙な構成で描き出されている。
■「一晩中」(1982)
ブリュッセルの暑い夜、眠りにつくことのできない人々。ある者は恋人の腕のなかに飛び込み、ある者は街に繰り出し、夫婦は語らい、そしてある者はバーでダンスを踊る……。官能的な熱を帯びた一晩の中で連結していく、数々の出会いや別れ。
■「ゴールデン・エイティーズ」(1986)
美容院やカフェが並ぶパリのカラフルなブティック街を舞台に、そこで働く従業員たち、客たちが恋模様を歌い上げるミュージカル。パステルカラーの衣装に身を包んだ登場人物たちが歌い踊るロマンティックな浮遊感と、愛に対するアケルマンの容赦ない視線が巧みにバランスされている。
■「アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学」(1989)
まるで「家からの手紙」からのバトンのように、霧の中のニューヨーク湾から始まり、夜の摩天楼が映し出される。次々にフレーム内に現れては自分のエピソードを語り、去っていく老若男女。記憶を手繰りながら時にユーモラスに、辛辣に語られていく彼らの幸福や悲しみ、それぞれの<アメリカン・ストーリー>。
■「東から」(1993)
ポーランドやウクライナ、東ドイツといった、ソ連崩壊後の旧共産主義国の都市とそこで暮らす人々の姿をとらえたドキュメンタリー。ナレーションや場所の名前をも排して、アケルマンは時折市井の人々の家庭の様子を散りばめながら、果てしない距離や文化情勢、生活様式を記録した。透徹した眼差しがその場所で確かに流れる時間と観客を近づけ、好奇心を駆り立て、映像そのものが静かに語りはじめる。
■「囚われの女」(2000)
祖母とメイド、そして恋人のアリアーヌとともに豪邸に住んでいるシモンは、アリアーヌが美しい女性アンドレと関係を持っていると信じ込み、次第に強迫観念に駆られていく。マルセル・プルーストの「失われたときを求めて」の第五篇、「囚われの女」の大胆で自由な映像化。嫉妬に苛まれ、愛の苦悩に拘束される虜囚の境地をアケルマンは洗練された表現で描写する。
■「オルメイヤーの阿房宮」(2011)
東南アジア奥地の河畔にある小屋で暮らす白人の男オルメイヤー。彼は現地の女性との間に生まれた娘を溺愛し外国人学校に入れるが、娘は父親に反発するように放浪を重ねていく……。「地獄の黙示録」のもとになった「闇の奥」で知られるイギリスの作家ジョゼフ・コンラッドの処女小説を脚色。
■「ノー・ホーム・ムーヴィー」(2015)
ポーランド系ユダヤ人であるアケルマンの母親の日常をアケルマン自身が撮影、ブリュッセルのキッチンで、時にはテレビ電話越しの会話で語られるのはささやかな日々の出来事や家族の思い出、そしてアウシュヴィッツ収容所で過ごした母の記憶。母は編集作業中に亡くなり、アケルマンも本作が完成した後にこの世を去った。深い痛みと愛情に満ちたドキュメンタリー。
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