【インタビュー】杏、司法を飛び越える強烈な母性を体現 「倫理に左右されない行動力」を通して観客に問いかける
映画.com / 2024年6月4日 14時0分
「法律というのは人が決めたものであって、100年、もしかしたら10年時代が違えば、また国が違えば、千紗子の行動も賞賛されるかもしれないですよね。極端な話で言うと、150年前はまだ仇討ちの法律があったりもします。倫理は移ろいゆくものですし、ある意味でそこに左右されない、動物的な勘というか、『彼を救いたい』という純粋な心を持っている。その行動力は、すごいなと思いました」
杏は撮影中、「人生・キャリアにおいて意味のある作品になったと思います。これが形になったとき、大きな節目を迎えるんだろうと感じます」と語っている。本作で、俳優として得たもの、また自身と同じ母役を演じたことで感じたことはあったのだろうか。
「本作の千紗子が母役かどうかというと、実の母ではないところが難しいのですが……。年々、年を重ねて涙もろくなるように、いままでだったら普通に聞いて、受け入れていたニュースに対して、『許せないな』と憤りを感じることが増えてきたような気がします。嬉しいことも、悲しいことも、怒りを覚えることもあります」
「自身の気持ちの変化もあるなかで、司法を飛び越えて体現していく、ブルドーザーみたいな千紗子には尊敬を覚えました。例えば皆『司法を飛び越えて救いたい、何かをしたい』という思いは、映画を見ていてもあると思うんですが、それができるか、できないかの差は大きいと思います。ストーリーのなかで、そうしたことをやってくれたというのは、すごくスカッとするというか。本作を見て『私もそういう行動をとりたかった』と思う方もいらっしゃるんじゃないかと想像しています」
まさに杏の言葉と同じように、関根監督も、「過酷な状況にある人を助けたいと思っても、罪に問われる可能性がある場合、なかなか実行に移すのは難しい。でも映画のなかで、その気持ちが伝えられたり、助けられたりするかもしれない可能性が提示されたら、傷が癒える人がいるかもしれない」と語っている。俳優として、そうした映画の力について、実感することはあるのだろうか。
「私は、自分ではない何かになることができたり、ほかの人生を覗き込むことができたりするのは、エンタテインメントの大きな魅力だと思います。この作品は日常の延長線上にある、いまもたくさんある問題や悩みを描いているので、『自分が渦中にいたらどうするだろう』と想像が広がるような気がします」
さらに、関根監督とのコミュニケーションや演出のなかで、印象的だった言葉についても、教えてもらった。
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