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【インタビュー】杏、司法を飛び越える強烈な母性を体現 「倫理に左右されない行動力」を通して観客に問いかける

映画.com / 2024年6月4日 14時0分

 「関根監督が脚本を書かれていることもあって、『誰かになる、演じるのではなく自分の言葉で言ってほしい、言いづらければ変えてもいいから自分の生の言葉を大事にしてほしい』と言ってくださいました。そこまでセリフの大きな変更はなかったのですが、とにかく自分のなかから言葉を出してほしいと思っていらっしゃるんだなと感じました」

 関根監督がセリフと、それを口に出すときの本物の感情を重視していることが伝わってくるエピソードだ。杏自身が演じるなかで記憶に残ったセリフは?

 「初めて『あなたは私の子どもなの』と少年に伝えるシーンで、そこでは終わらずに、『私のことをお母さんと呼んで』という言葉が、ある意味、罪深いなと思いました。自分が伝えるだけじゃなくて、相手に言わせることで、共犯関係にするというか。そこはかなりエゴが混ざっているところなので、演じていてもすごくハラハラ、ヒリヒリするセリフだなと思いました」

 杏が口にした「日常の延長線上にある問題や悩み」として、本作では虐待や認知症などが描かれている。千紗子は、厳しかった父との確執や葛藤を抱えながら、日々、記憶を手放していく父と向き合うことになる。

 「(孝蔵が失くしたものを探すシーンで)千紗子が『泥棒だ』と責められるなど、日常でずっと付き合っていかなくてはならず、治るわけでもないというのは、面倒を見る側の家族にとっては大きな負担だと思います。ですが本作では、そういう部分を隠さずに描いています。(孝蔵を演じた)奥田さんは素に戻られる瞬間があまりなくて。常に演じているというわけではないのですが、口数少なく、孝蔵が抜けきらないようにされていたのかなと思いました」

 シリアスな出来事が続く物語のなかでも、疑似家族のようになった3人がオブジェを創作するシーンはきらきらと輝き、幸福を感じさせる。同シーンは、ほぼアドリブで撮影され、3人のリアルな感情がみずみずしく映し出されている。

 「3人揃って、笑顔で楽しいことをしているのが、実はあのシーンしかなくて。皆が能動的に、楽しく動いて、楽しく笑っています。あの家のシーンは、まとめて数日間で撮ったのですが、家のなかで起こる出来事では、笑っていることがなかったので、オブジェのシーンは特に記憶に残りました。あの工房で、3人が笑顔で……というのは、映像で見ていても現場でも、『何かいいな』と皆で言っていました」

 3人が疑似家族のようになっていく描写からは、孝蔵は全てを忘れてしまったとしても、新たに芽生える感情や愛着を抱えて生きているのだと感じられる。そしてある意味では、少年も孝蔵も“忘れる”ことで、ひとつの家族が形作られていく点も興味深い。

 「お父さんは、症状が進んでいくなかで、どんどん赤ちゃんに戻っていくんですよね。そのなかで、『いろいろなものから、ある意味解放されているのかもしれない』というお医者さんの言葉があったのですが、どんどん無垢になっていく存在と、まだ無垢でこれから無垢ではなくなっていく存在というか、これからいろいろなことを学んでいく少年と、その中間にいる千紗子という存在が、一箇所で同じ気持ちを向けた数少ない、唯一のシーンだと思います。皆、自由にやっていたので、突発的なものがあったりして、それがすごくドキュメンタリーっぽいものだったりして、楽しかったですね」

 「かくしごと」は、6月7日から東京のTOHOシネマズ日比谷、テアトル新宿ほか全国で公開。

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