1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 映画

【インタビュー】平泉成、俳優生活60年から振り返る「縁」 三隈研次監督、市川雷蔵さんとの思い出

映画.com / 2024年6月8日 9時0分

 僕らの時代は、若手はエキストラからのスタートなんです。雷蔵さんの横を歩いたら、三隈先生が『おっさん、仕事へ行くのか、帰るのか?』って聞いてくるんです。若かったから、エキストラだし歩くだけだろうと思っていたんですよ。台本も読んでいなかったしね。先生が『ちょっとライティングとかやっているから、俳優側に行ってこのシーンを読んでこい!』と言ってくださったので飛んで行ったら、朝の設定だった。

 『朝でした!』『朝ということは、これから仕事へ行くんだろう? だったら、そういう風に歩かなければダメだろう。今日も頑張るぞ! なのか、嫌だなあ…なのか。さあ朝だ、仕事だと行くことによって、その空気がオープンセットに出来るんだ。空気が出来上がったとき、真ん中に主役がスッと入って来るんだ。これが大事なんだ。おまえたちは、ただ歩きゃいいってもんじゃない。ちょんまげ付けながら白い下着が見えたらまずいだろう? そういう空気を作ることこそが、映画に参加するうえで一番大事なことなんだ。エキストラだからといって、いい加減なことをしちゃダメだよ』と叱ってくれたことが、今の僕の役者としての礎になっているのかな。

■小遣いを入れてくれた市川雷蔵さんの“親心”

 雷蔵さんも『おっさん、今日暇かい?』って声をかけてくれて、『はい、暇です』『わしの代わりに京都会館まで舞台観に行ってくれるか?』『いいですよ』『あとで切符を届けさせるからな』ってね。お付きの人が届けてくれた封筒を開けてみると、切符と小遣いが入っているんです。舞台を観た後にちょっと飯食って帰れるようにね。金がない時代だったから、嬉しかったなあ。

 舞台には、俳優座や文学座の監督たちも来ていて、観賞後に近所の喫茶店に集まるわけです。僕もその隅っこに座って話を聞かせてもらいました。雷蔵さんにも、よくしてもらった。後から、どうしてなんだろう?と考えてみたんですが、『平泉成もいい子だけど芝居が下手だから、もう少し勉強させないとダメだ。切符だけじゃ行かねえから小遣いも入れて行かせよう』と考えてくれたんじゃないかなあ……ってね。雷蔵さんだって当時33、34歳くらいですよ。それくらいの年でそういう気配りが出来たんだねえ。本当にお世話になったなあ」

■「大魔神怒る」主演・本郷功次郎さんと食らった大目玉

 質問や言葉を差し挟む必要がないほどに、往年の映画人たちとのやりとりに胸が高鳴ってくる。筆者が、最も血沸き肉躍る取材は映画の撮影現場にあると伝えると、満面の笑みで「分かるよ!」と同調してくれた。平泉がこれまで撮影現場で目の当たりにしてきた、目に焼き付いて離れない光景について聞いてみた。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください