笑うしかないけれど、遅効性の毒みたいな映画 「男女残酷物語 サソリ決戦」を見て考えた、女が男に復讐する映画と古い知人【二村ヒトシコラム】
映画.com / 2024年6月14日 22時0分
話が遠まわりしましたが、「男女残酷物語 サソリ決戦」は復讐の映画でもなければ、未来に向かう映画でもありません。じゃあどういう映画なのかというと、男も女も「異性をやっつけようとすることでしか異性と愛しあうことができない」という呪われた信念を描いている映画です。やってることが残酷というより、そういう信念をもってしまった登場人物が存在せざるをえない世界が永久に終わらないことが残酷です。
僕は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」や「哀れなるものたち」が大好きですが、「男女残酷物語 サソリ決戦」のような救いや赦(ゆる)しがない映画も好きです。きれいな映画ばかりになって、こういうコメディではないのにアホな映画が、笑うしかないような残酷な映画が、なくなってしまっては困ります(フィクションではなく現実にいるメイヤーのような人には思想を変えてほしいものですが。笑いごとではなく、けっこういると思います)。
▼「男女残酷物語 サソリ決戦」を見て思い出した人
この映画を観ながら、僕は一人の知人を思い出していました。アダルトビデオの監督です。
彼は、非道な悪の組織の基地に潜入したのに罠におちて捕えられてしまった女性秘密捜査官(美貌とエロい肉体の持ち主)が性的な拷問をうけて、くやしがりながら悪の手によって気持ちよくさせられてしまうという設定の、この映画の前半でセイヤー氏がやってたようなこと(あんな奇怪な拷問ではなく、もっと女性も気持ちよさそうだし普通のAVユーザーが普通に興奮できるような行為ですが)をポルノ映像としてやるようなAVを、ひたすら作っていました。
彼が制作していたのは合法的なAVですから事前に女優さんは台本と段取りを確認しますし、もし女優さんが痛かったらすぐ撮影をストップするよう悪役の男優さんとも綿密に打ち合わせをして、でも映画ではなくてAVですから、女優さんには本当に気持ちよくなってもらうのです。
撮影が終わって、正義が悪に敗北して何度も何度も本当に気持ちよくさせられて大汗をかいた女優さんが、シャワーを浴びて女秘密捜査官のメイクも落とし、ケロッとして帰っていくのを見送る監督の表情は満足げでもあり、どこか寂しげでもあるのでした。
僕は当時「なんでこんな映像ばかり撮ってるんですか?」と訊いてみたことがあるのですが、そしたら「われわれ男が女性をセックスでやっつけようとしても、やっつけてもやっつけても、かならず彼女は再び立ち上がり、われわれは女性には絶対かなわないのです。そのことを味わうために撮りつづけているのです」という文学的な答えが返ってきて、僕は笑ってしまって「なんだそれ」と言いましたが、言ってることはわからんでもないです。彼はセイヤー氏とはまた違った思想とキャラクターでしたが、サディストのようでいて実際はマゾヒストだったのかもしれません。しかし、いくらなんでも女性というものを神格化しすぎてますよね。
じつは彼は、その後AV業界から失踪してしまって(実話です)いま僕も連絡がとれないのですが、もしどこかで元気にしてたら、ぜひ「男女残酷物語 サソリ決戦」を観てもらいたいです。そして感想を聞きたいです。ていうか、もしもどこかでこのコラム読んでくれてたら連絡ください。
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