1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 映画

認知症の父の心の迷宮で見つけたものは… 森山未來&藤竜也、近浦啓監督「大いなる不在」で魅せる居合のような対峙

映画.com / 2024年7月12日 13時0分

 「卓が俳優である、それは物語の構築の初期からそう考えていて、なぜ俳優にしたいと思ったのかについて、無意識下から意識に上げて、自己分析しました。当初から森山さんをイメージでして書いて、そこはすごくスムーズでした」と、卓役は、当初から森山を想定していたという。

 内容に関しても、劇中の卓さながら、リサーチをするような気持ちで主人公の感情を紐解いていき、また、森山未來という俳優が、卓という俳優を演じることの興味深さについても語る。

 「もちろん演じている自分は時系列がわかっているので、そのサスペンス要素が、初めて見た人にはどのように映るのかに興味があります。また、卓が俳優であることが、自分にとってもは面白いながら、観客に対してどういう共感性を持たせられるのかが悩ましい部分もありました。とにかく、父との関係性、距離感、卓の俳優としてのポジションなど、啓さんと多くの話をしながら理解していった気がします」

 「長年会っていない父親との距離感、それでも面倒を見なければならない……そういう複雑な状況にもかかわらず、どこか客観的に見ている卓がいて。目の前で起きていることの、その圧倒的なドラマ性みたいなものを俯瞰視してしまう感覚は、俳優業をやっているから持ってしまう視点かもしれないと想像しました」

 今回初共演となった藤とは、父と息子という濃密な役柄で対峙し、そのヒリヒリした設定と唯一無二の関係性は、ふたりの抜群の演技力でスクリーンを支配していく。事前に互いの役柄について話すことは一切なかった、というのが驚きだ。

 「藤さんとは現場でしかお会いしていないんです。ご挨拶程度はさせてもらったと記憶していますが、現場では必要以上の緊張感を作ることもなく、かといってくだけたやり取りもなく、ある種淡々と関わらせていただきました。卓と陽二の距離感としては緊張感のあるシチュエーションが多い作品ですが、シンプルに楽しみました」

 そんな森山を「いい俳優さんですよね」と藤が称える。「居合のように、お互いに構えただけで、やり取りができちゃうんですよ。パーンって来たら、こう返す……のように。そうやって、もう何も喋る必要はないんです。俳優それぞれインターアクションの仕方が違うから、話なんかして場を持たせる必要はなくて。カットが終わったらまた違うところ行って……。だから面白いエピソードはないんですよ。何も特別なことは起こっていないんですから(笑)」と、藤らしい師範級のコメント。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください