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認知症の父の心の迷宮で見つけたものは… 森山未來&藤竜也、近浦啓監督「大いなる不在」で魅せる居合のような対峙

映画.com / 2024年7月12日 13時0分

 藤が演じる父の陽二は、認知症を患っているが、高度な知性を有する大学教授という設定だ。ロジカルな言葉(セリフ)、そしてそれに反するような症状を同時に体現する、藤の圧倒的な演技に引き込まれる。

  「あんまり役作りはしませんね。私自身が毎日、自身の老いと対面していますから。この人生はメイズ(迷宮)だと思いますね。それでいいんだ、だから人間は愛おしいんだって思います。『認知症? だからなんですか?』みたいな感じ(笑)。酷な親子の関係だけど、それも俯瞰してみれば、愛おしいもの。森山さんは、役者、表現者としての目線で、その状況を見ていると仰られて、非常に納得がいきました。私ももし若くて、森山さんの役だったら、きっとそうするだろうなと思いました。その感じが非常に出ていましたね」

 近浦監督の前作「コンプリシティ 優しい共犯」にも出演している藤。今作は全く異なるタイプの作品となったが、「ドキュメンタリーのような感じのある、すごい台本だと思いました」と感想を述べる。「監督とこの映画とどう付き合うのか、しばらく想像がつかなかったですね。やりがいがありました。(陽二が)どうしようもないことに陥って、25年も疎遠だった息子がそこに引っ張り込まれて……切ないですが、これこそ人間の在り方ですよね。そして、見終わった後に言葉では説明できない心のどよめきがある。それが新鮮で、この映画の醍醐味だと思います」

 藤は、第71回サン・セバスティアン国際映画祭のコンペティション部門でシルバー・シェル賞(最優秀俳優賞)、北米最大の日本映画祭“ジャパン・カッツ”では特別生涯功労賞を受賞。本作は海外での公開も決定している。「世の中変わりましたね。映画のあり方がすごくグローバル化して、そこに参加させてもらって、すごいなと改めて感じました。海外に作品を持っていく近浦さんも、舞踏家と俳優とで世界を動き回る森山さんも、私から見るとみんな大谷(翔平)選手のよう(笑)。僕は監督の才能に乗っかっているだけですよ」と謙遜し、「今や、世界各地に日本映画の映画祭や特集があって、『大いなる不在』を楽しもうと思う人がいる。それは、昔はなかなか難しいことでしたから、うれしいですね」と述懐。

 最後に、「藤さんと森山さんの間で、『俺はこう行くから、僕はこう行きます』のような事前の会話もなく、もうそこに陽二と卓が存在し、そして、拮抗する――最高にいいショットです」と撮影を振り返る近浦監督。さらに、「全編35ミリフィルムで撮った本作をぜひ劇場の大画面で見てもらいたいと思います。映画祭出品とか受賞などと言うと難解な芸術作品と捉えられてしまうかもしれませんが、僕の中では第一に良質なエンタテインメントを作りたいと思って撮った作品です。気楽に見てもらいたいです」と結んだ。エンタテインメント性あふれる、とある家族の心のラビリンスを是非映画館で体験してほしい。

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