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「墓泥棒と失われた女神」アリーチェ・ロルバケル監督インタビュー 映画の歴史へのオマージュ、ジョシュ・オコナーのために書き直した脚本

映画.com / 2024年7月20日 11時0分

――「発掘」と「映画製作」にはどのような繋がりがあると思いますか?

 私は常に「過去」に興味があって、古代ギリシャ語やラテン文学を学んだこともあります。そして、映画製作者としての私の仕事は、何らかの形で考古学とつながっていると思います。私の執筆プロセスは、まるで考古学者のように、何らかの痕跡を見つけ、掘り始め、それらの発見物をまとめていく作業ですから。この映画自体、考古学の発掘調査のようなものですね。映画製作と考古学という2つの世界を組み合わせるのは良いアイデアだと思いました。

――墓泥棒のリーダー役にイギリス人俳優のジョシュ・オコナーがキャスティングされた理由について

 本作のキャスティングはプロの俳優と地元の人々が演じるアンサンブルで、地元の人々は主に私のご近所さんたちです(笑)。彼らは劇中の地域にルーツを持っている人々なので、主人公アーサーのキャラクターは外国人を念頭に置いていました。墓泥棒たちのリーダーとして、第二の視点を与えてくれる外国人が欲しかったからです。これは同時に、17~ 19世紀においてイギリスの貴族や上流階級の人々が教育旅行でイタリアを訪れ、地元の人々に彼らが持つ文化的な豊かさや価値を伝えたという「グランドツアー」へのオマージュでもあります。

 アーサー役のイギリス人は当初、ジョシュ・オコナーより年上の俳優を想定していましたが、彼は「幸福なラザロ」を観て感銘を受けたといい、私に何度も手紙を送ってくれていたんです。彼と会ってすぐに人柄や感受性の豊かさに惹かれたのと、彼の若さはこの物語にとって非常に価値のあるものだとも思いました。それに彼は若いけど、どこか古風なところがあります。そこで私はジョシュのために脚本を書き直しました。

――本作を作るうえで影響を受けた映画はありますか?

 記憶に結びついた物語に取り組むときは、必ず何らかの作品の影響があります。私はむしろそれを「連想」と呼んでいます。私は多くの墓泥棒に取材をしましたが、彼らはよく「神聖な場所に侵入すると、その場所に酸素も入り込むのでフレスコ画の色が落ちてしまうことがある」と言っていました。その話を聞いてすぐに「フェリーニのローマ」でまるっきりその出来事が描かれるワンシーンを思い出しました。もしかしたらフェリーニには墓泥棒の友人がいたのかもしれませんね。また、私にはロベルト・ロッセリーニの映画にも縁があるし、社会の片隅に住む人々を描くときにはパゾリーニの映画も思い浮かべます。

――劇中では「廃駅」に集まる女性たちのコミュニティが描かれますね。より良い共同体のあり方のようなものを示唆しているのでしょうか。

 本作では、過ぎ去った過去の遺物が誰のものか、そして誰がそれを覚えているのかについても描いています。私は最終的に誰のものでもなくて、みんなのものになる場所が欲しかったのです。「死」や「死後」の世界といった悲劇的なテーマを扱った映画のなかで、ささやかな希望の兆しとして、生命が生まれ変わる廃墟のような場所を。本作で描かれる男性のキャラクターたちは男性らしさを強いられているともいえますが、その代わりに物を壊すのではなく生き返らせる女性たちについても語りたかったのです。

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