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トランプが副大統領候補に指名。J・D・ヴァンスの映画をNetflixで見た【映画.com編集長コラム】

映画.com / 2024年7月24日 15時0分

 テーマは暗いのですが、ちゃんと救いもあります。そして、オスカーにノミネートされたグレン・クローズを筆頭に、母親役のエイミー・アダムス、ヴァンス役のガブリエル・バッソなど、俳優たちが名演を見せています。ヴァンスの少年時代と大学生時代、2つの時代を行ったり来たりするロン・ハワードの演出も巧みです。大きなカタルシスは用意されていませんが、スタジオはガチでオスカーを狙った案件だと思います。

 見終わって改めて驚くのは、映画が公開された時よりも、ヴァンスが副大統領候補になった今、この映画の価値が爆上がりしている事実でしょう。2022年に初めて選挙に当選し、今年(2024年)は副大統領候補になったヴァンスですが、それより前の2020年に自身が主人公の映画が作られている(原作は2016年)。まるで、どんどん伸びていくレールの上を走るトロッコのようです。その一番前に乗っているのがヴァンス。

 トランプとの関係性はさておき、J・D・ヴァンスのどん底から這い上がった経験値は並じゃない。強烈なナラティブを身にまとったヴァンスは、ひょっとしたら歴史に残る政治家になるんじゃないかとさえ思います。

 この映画もさることながら、ヴァンスに関するもう一つの大きな驚きは、シリコンバレーとの接点です。彼はイェールの大学院を出た後、ベンチャーキャピタルの社長を務めていた時期がありますが、この会社のオーナーがピーター・ティールなのです。ティールは、いわゆる「ペイパルマフィア」の最重要人物で、イーロン・マスクの盟友のひとり。ヴァンスが上院議員に立候補した際にも、ティールが1500万ドル(約24億円)もの献金を行っていたそうです。

 イーロン・マスクもつい最近、毎月4500万ドル(約70億円)をトランプ陣営に寄付すると発表しました。トランプ=ヴァンス陣営は、シリコンバレーの2大ビリオネアのバックアップを受けたことになります。

 2024年のアメリカ大統領選の投票日は11月5日。あと3カ月以上あります。これから何が起こるかまったく分かりませんが、共和党サイドはトランプの相方となったJ・D・ヴァンスの動向に大注目となりました。個人的に、今年(2024年)下半期の最重要人物のひとりです。

 アメリカ大統領選挙に興味をお持ちの方は、是非Netflixで「ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌」をご覧になってみてください。私は、これから小説の方(「ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち」)も読んでみようと思います。

(駒井尚文)

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