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村上春樹原作初の長編アニメ映画「めくらやなぎと眠る女」監督インタビュー 制作プロセスは「目が覚めるような体験」

映画.com / 2024年7月27日 9時0分

 ある表現が何かより適している、またある芸術分野が他の芸術により優れているとか、そういう考えは全くありません。たまたまそれまでに10本の映画に携り、アニメーション映画を作ったり、実写作品とごちゃ混ぜにしたような作品を作ったりするなかで、この作品の基となる短編アニメーションがいくつか出来上がり、その中で自然な選択としてアニメーションという手段を選んだに過ぎないのです。

 しかし、そうは言っても、村上春樹作品の、特に短編小説の中に現れるある種のイメージをどう表現するかと考えたとき、それは多分音楽ではなく、アニメーションという手段が適していると思いました。それは、マンガ風や子ども向けなどの誇張された表現ではなく、むしろ何か新しいアニメーションのスタイルを作り出すことで、村上さんが提案する新しい文学のスタイルとうまく結合し、私なりの理解としての村上春樹の世界というものを作り出せるのではないかと考えたのです。

 また、私は非常にデリケートで微妙な表現を好みます。ですから、アニメーションを用いれば、その微妙さを極端に推し進める表現として作り出すことができると思いました。

――「ライブ・アニメーション」と名づけ、俳優を用いた実写撮影をベースにアニメーションを制作されたそうですね。この映画では村上作品の不思議で生々しいリアリティが表現されています。現段階でフランス語版、英語版があり、そして日本語版も制作されました。

 公式にはフランス語のフランス映画で、新潟国際アニメーション映画祭や試写会でご覧いただいたのは英語版です。日本語版も作りました。まず、実写でカナダで英語で撮影して、音声も英語で録音し英語版を用い、その後フランス語版を作ったという順です。

 あくまで一般論ですが、いわゆるアングロサクソン系の俳優は、演技力に頼る部分が強いと思うんです。それに対して、フランスの俳優は、よりリアリストというか、現実ベースな演技になっていると思います。私自身のスタイルとしては、アメリカやイギリスの俳優たちの演技、いわゆるアクターズスタジオ出身のような表現が、登場人物を作り出すというプロセスにより適していると思い、カナダの俳優たちと撮影することを選びました。

――村上春樹さんの短編の登場人物たちが物語を横断します。作画もあなたが行ったそうですがキャラクターの人物設計について教えてください。

 登場人物自体は村上春樹さんが書いたものとして存在はしているので、この作品の中で、私は単にそれを抽出していったに過ぎません。ただ、複数の短編をミックスしているので、 何人かは、複数の作品に登場する人たちのハイブリッド混合体として作り出されてる部分があります。

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