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セックスだけでなく“愛”も危険なもの 小児性愛者の性的搾取描く「コンセント 同意」は、人の心の残念なシステムを知る映画【二村ヒトシコラム】

映画.com / 2024年8月3日 20時0分

▼性的同意とは何なのか? 告発者が訴えたかったこと

 ガブリエル・マツネフは、この映画の原作の著者であり映画の主人公、つまり彼に対する告発者であるヴァネッサ・スプリンゴラとの関係について、告発本がでた後にも「彼女との間には特別な愛があり、まちがった行いはなかった」と述べています。自身に対する世間からの非難とバッシングについては「新しい潔癖主義の波だ」と言っています(以上、https://www.afpbb.com/articles/-/3266144 より)。

 未成年者買春については「やらないほうが賢明だったなあと思うようになった」ということで、ヴァネッサが14歳のときからはじまった関係については「あのとき二人の間には気持ちが通っていて、もちろん同意も取れていて、その後、心が変わったのは彼女のほう」ということなのでしょう。

 この映画は、まさに、その「(性的)同意とは何なのか」についての映画です。告発本もタイトルは同じですから、大人になったヴァネッサが本を書くことでガブリエルに伝えたかったのはそのことなのだろうと僕は思うのですが、けっきょく彼には、彼女の言いたいことがあまりうまく伝わっていないのでしょう。

 あのときはあのようにしたかったし、自分の意志でそうしたけれど、ほんとうは苦痛だった(つまり、あのとき交際やセックスに私は「同意」したけれど、いま考えれば、私は自分に嘘をついていたし、あなたは私を人間として扱わずに利用していた)ということを、後になってからはっきりと感じ、後になってから考えを変えて自分自身を精神的にやっとケアできるようになるということが人間にはありえます。

▼立場の強弱があるところにセックスをもちこむのは危険なこと

 世の中には強い人間と、弱い人間がいます。まず、立場が強い・弱いという格差があります(年齢の極端な差というのも、経済的な格差や知名度の差と同じように、立場の強弱の差になりえるでしょう)。そして、心が強い・弱いという格差もある。

 心が強いか弱いかというのは、その人が過去に(つまり幼い頃から)どういうふうに傷つけられてきたかに関係あるかもしれませんし、ないかもしれません。

 立場が強くても心が強い人であれば、自分よりも立場が弱い人を、無視したり虐待したり支配したり精神的にコントロールしたり経済的に搾取したり、愛という名の搾取をしたりを、しなくてすむんじゃないかと僕は思います。

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