1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 映画

セックスだけでなく“愛”も危険なもの 小児性愛者の性的搾取描く「コンセント 同意」は、人の心の残念なシステムを知る映画【二村ヒトシコラム】

映画.com / 2024年8月3日 20時0分

 心が弱い人のなかには、自分より立場や心が弱い人をいじめる人も多いですけど、愛という言葉をつかって他人をコントロールして支配することで自我を補強する人もいます。

 また、肉体や精神をコントロールされ支配されて「自分というもの」を失うことで、自分の心の弱さや、つらいことを一時的に忘れたいと願う人もいます。

 セックスで相手を支配したい・相手から支配されたいという欲望をもつのは、人間にとって、そう変なことではないと僕は思います(そういう欲望をもたなくても生きていける人もいるでしょうが)。ただし、その欲望は、自律できている大人同士で、セックスの場だけで満たしていれば安全ですが、その支配関係が日常でもつづいていると危険です。

 たとえば日常において立場が強い側がセックスではマゾだとか、日常において対等な2人がセックスで支配・被支配ごっこを演じたりするのであるならば、まあ安全性は高いといえます。

 しかし、セックス以外のふだんの関係がセックスでの関係と同じ支配・被支配の形式になってしまっていたり、あるいは「大人と子ども」のように立場の強弱があるところにセックスをもちこむのは、現代の社会においては(セックスや婚姻が支配関係の強化につかわれていた封建時代はそれでよかったのでしょうが)精神的にたいへん危険なことだと思います。

▼「愛」も危険なもの 子どもの頃から人の心の残念なシステムを知るべき

 子どもは自分が尊敬する大人、自分のことを誰よりもわかってくれていると思える人から、セックスで愛されることで、自分は何者かになれるのだと夢みる場合があります。あの人から身も心も愛されることで、いまの不完全な自分、くるしい自分とはちがう存在にきっとなれると思いこむのです。そういう他力本願な夢をみる「子ども」は未成年者だけとはかぎりませんが。

 立場は強いけれど心は弱い大人のほうも、自分がセックスで「愛して」あげることで、あの人を助けてあげられるという幻想にとらわれてしまう場合があります。けれど、それをじっさいに行うのは相手の弱い心につけこんでいるのですから、ひじょうに卑怯なことだと思います。

 そういうふうに、セックスだけでなく「愛」も危険なものだってことを、人の心の残念なシステムを、現代の子どもたちは子どもの頃から知っていたほうがいいと僕は思います。だからこの映画 「コンセント 同意」は、たとえば小学校高学年や中学校の授業で観せるべき映画だ(もちろん子どもたち個々へのトラウマのケアはじゅうぶんになされた上で)とも思ったんですが、なにしろセックスの場面も多く、日本では15歳以下の人は観てはいけないんですね。それでもR18+指定にはならなかったのは、映倫も「これは教育的な映画だ」と判断したのかもしれませんね。高校生はぜひ観ましょう。本国フランスでは鑑賞年齢制限はあったのかな?

 ヴァネッサとガブリエルのラブシーンやセックスシーンは正直「こんな長い尺、必要?」と僕は思ったんですけど(グロテスクな印象をつけたかったのかもしれませんが、ヴァネッサを演じたキム・イジュランが成人女性なので…)、ただ、最後のほうの別のボーイフレンドとヴァネッサのセックスシーンでの、キム・イジュランの鬼気せまる表情と表現、ほんとうに凄かったです。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください