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重病の父の誕生日パーティーで揺れる娘の心、家という小宇宙「夏の終わりに願うこと」監督インタビュー

映画.com / 2024年8月10日 9時0分

重病の父の誕生日パーティーで揺れる娘の心、家という小宇宙「夏の終わりに願うこと」監督インタビュー

(C)2023- LIMERENCIAFILMS S.A.P.I. DE C.V., LATERNA FILM, PALOMA PRODUCTIONS, ALPHAVIOLET PRODUCTION

 ベルリン国際映画祭エキュメニカル審査員賞受賞、アカデミー賞国際長編映画賞ショートリストに選出されたリラ・アビレス監督長編第2作「夏の終わりに願うこと」が公開された。離れて暮らす父と再会した少女の揺れ動く心をみずみずしく描き、世界各地の映画祭で注目を集めた家族のドラマだ。東京国際映画祭でも上映され、昨年来日したアビレス監督のインタビューを映画.comが入手した。

<あらすじ>
ある夏の1日。7歳の少女ソルは大好きな父トナの誕生日パーティに参加するため、母と一緒に祖父の家を訪れる。病気で療養中の父と久々に会えることを無邪気に喜ぶソルだったが、身体を休めていることを理由になかなか会わせてもらえない。従姉妹たちと遊びまわることも、大人たちの話し合いに加わることもできず、いらだちや不安を募らせていく。ようやく父との再会を果たしたソルは、それまで抱えていた思いがあふれ、新たな感情を知ることになる。

――この物語は少女ソルの視点で始まりながら、家に集まったそれぞれの人々を映し出し、最終的に全体像が浮かび上がってくるという一般的な起承転結とは異なる構成になっています。

 中心軸はソルであることは決まっていました。でも、彼女を取り巻くのは一人ではない集団です。それ全てが、何らかの形でつながっていることを示したかったんですね。ですから、強制することなく、急ぐことなく、流れるように、カメラがそこにいる人物とコミュニケーションをゆっくりと追っていくようにしました。

――だからこそ、この作品は父と娘の物語でありながら、そこに終始せず、タペストリーのような作りになっているんですね。

今回は家という1カ所のロケーションで撮影しているのからこそ、多様が必要でした。私は音楽もあまり使わないので、どういう風に物語をダイナミックに表すかことができるかを考えたときに、複雑になっても、登場する一人ひとりが、それぞれの弱さをそれぞれのかたちで表出させることで、みんな違うということを表現したかったんですね。その中で、多様な美しさが現れてくると思いました。

――確かに、家族、友人だけでなく、動物、犬、猫、鳥、虫などの生き物がそれぞれに出てきます。

 今回、家という場所を、ミクロコスモス(小宇宙)として表したかったんです。その世界の中には、いろんなものが現れているということを示したかった。なぜかというと、今の世界はもう無茶苦茶で、破壊され尽くされているから。また、テクノロジーの進化も相まって、家の外で忙しい日常生活をずっと続けていると、家族がどんなものだったさえ忘れてしまいがちになります。だからこそ、私は基本に戻りたいと願い、家というミクロコスモスに、いろんなものを招き入れました。その中では、誰かとコミュニケーションをとる力は超能力のような特殊なものではなく、例えば、動物という存在がそこにいて、その存在が自分と関係として、お互いに相互作用しているんです。

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