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終戦の日「映画 窓ぎわのトットちゃん」上映 八鍬新之介監督が語る制作秘話【ひろしまアニメーションシーズン2024】

映画.com / 2024年8月15日 21時30分

 原作には画家、いわさきちひろのイラストレーションが印象的に用いられているが、アニメーション化でのビジュアル面については、「いわさきさんの絵にパブリックイメージがあると思ったので、まずは背景を、ポスターカラーを使って、塗り逃しのあるような、水彩画に近い印象にしようと考えました。たまたま徹子さんが『世界ふしぎ発見』でカール・ラーションという画家を特集している回があり、その方の絵がなんとなく理想に近く、美術さんやキャラクターデザイナーさんと色彩設計を話し合って淡い画面を作っていきました」と振り返る。

 時代考証についても、多くのリサーチを重ねた。「最初はプロットとキャラクターデザインから始めました。最初僕らが想像していたのは『火垂るの墓』や『はだしのゲン』のような世界観のやんちゃな女の子でしたが、(トットちゃんは)東京の山の手育ちで、パンを食べていたという、僕らが知らない時代の日常の世界があった。これはきちんと調べないと間違えたものになると思い、徹子さんご本人はもちろん、時代考証の専門家にもしっかり話を伺って組み立てていきました」

 これまで映像化を許可してこなかった理由のひとつに、トットちゃんが通ったトモエ学園の校長、小林先生が実在の人物であり、小林先生役に合う俳優がいないということがあったそう。「アニメーションの場合は、ご本人の写真と徹子さんから聞く人となりに合わせて自由にデザインできるので許諾をいただけた」と明かす。

 聞き手の山村氏は、アニメーションでは珍しい、人物の唇や頬骨が描かれたキャラクターに、「顔の作りはもちろん、小さな小指の感覚まで伝わるような丁寧な作画がされており、実在の人物を映像化するという部分でとても有効。肉体的な感覚を得るからこそ、映画の中で死にうるものになっていると思う」とリアルな肉体性に着目した。

 そういった特徴について八鍬監督は、お転婆で、やや忙しないトットちゃんの動き、また親友の泰明ちゃんが小児麻痺を患っているという設定については、発達障害を抱える子どもたちが通う学校や、ポリオ患者による団体を取材した。さらに、偶然にも「徹子の部屋」のプロデューサーが、小林先生についての著書を出版していたという逸話も明かした。トモエ学園の卒業生による書籍と併せて、小林先生の戦争に対するスタンスが見えたという。

 ヨーロッパに留学経験のあった小林先生は、戦争には協力しない姿勢を見せたトットちゃんの父親とは異なり、敗戦国ドイツの悲惨な状況を知っているがゆえに、戦争を始めたからには勝たなければいけないという考えを持っていたが、多くの命が失われることに憤りを見せる葛藤も表現した。「トモエ学園も国の方針からは逃げられなかった。そんな中でトモエ学園を守ってきた、小林先生の綺麗事ではない部分を意識した」と本作での設定を解説する。

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