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横浜流星VS山田孝之、瞬き忘れる緊迫の18秒間 藤井道人監督が明かす、驚きの演出法【「正体」現場ルポ】

映画.com / 2024年8月26日 0時0分

 一方、面会室のアクリル板を挟みながら、約18秒間も見つめ合ったままの芝居を披露したのが横浜と山田。ふたりにしか分かち合えない空気が流れ、スタッフの誰も彼もが固唾をのんで見守っている。

 絞り出すように言葉を紡ぐ横浜(鏑木)の真摯な面持ちに呼応するように、山田も視線を外すことがない。「はい、カット!」。おもむろに山田の方へと歩み寄り、ひざまずきながら語りかける藤井監督は、充実感をにじませた表情を隠そうとしない。

 「山田孝之さんは、僕にとって映画人のなかでもとても緊張する存在です。それは、『デイアンドナイト』というインディーズ時代に撮った作品に、プロデューサーとして関わってくれた時からずっとです。彼の考え方、映画界への思いを継承したいと思って、ずっと背中を追いかけてきました。

 そんな山田さんに、初めて役者としてオファーしたわけです。今回は流星を追いかける役。ダメ元でカフェに呼び出して、お願いをしました。現場で演出するときも緊張しますけど、彼に出演してもらえてひとつ夢がかなった気がします」

 この見つめ合うシーンの直後、藤井監督は山田とひとしきり話してから、横浜に対しひと言だけ言葉を投げかけている。

 「山田さんに対しては、『(台詞を話し出すまでの“間”を)もっと短くしてください』とお願いしました(笑)。流星には『キュッと!』とだけ伝えました。流星は脚本を作るときから一緒にやっていくタイプなので、彼に関しては基本的に全部知っています。彼がどれだけ素晴らしいパフォーマンスをしてくれるかも理解したうえで、一緒に練り上げていくというか、互いに妥協しないままOKテイクを導き出していける存在なんです。

 ちなみに、流星にだけは演出のアプローチが全く異なります。他の役者には感情の話を中心にしますが、流星にはそこはもう終わっているので、『いま横で何ミリだから、その表現じゃ伝わらないよ』『受ける間を何秒ずらして』など、それくらいテクニカルな話が彼にはできているんです。それができるのは流星だけです」

 藤井監督は、自らの映画人生において「『正体』は、期せずして第2章にずれ込んできたもの」と表現する。

 「もともとは35歳までに撮り終えているはずでした。今年発表した『パレード』は決別、『青春18×2 君へと続く道』は始まりを意味します。僕は河村光庸というプロデューサーに出会い、本当にお世話になった。『パレード』は彼とお別れをするための映画。『青春18×2 君へと続く道』は外へ出て映像を作っていくために自分から選択した道。『正体』は撮影が後ろの時期にずれたことで、一番状態のいい映画になるように感じています。一番脂の乗った最高のエンタメ作をお届けしたい。商業的にもですが、『これは絶対に劇場で観た方がいい!』と言ってもらえる、極上のエンタメ作品を作れている自信があります」

 「正体」は、11月29日から全国で公開。

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