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ホラーファン注目の新鋭!「映画検閲」プラノ・ベイリー=ボンド監督がデビュー作でホラーを選んだ理由

映画.com / 2024年8月30日 20時0分

 男性検閲官があまりにもそのシーンが危険だと信じており、そして影響を受けてしまう。また、自分の奥底に、自分は悪い人間だという思い込みがあり、そういう映像を見たことで目覚めてしまうようなキャラクターと物語を想定していました。

 そして、あの当時「ビデオ・ナスティ」と呼ばれる、暴力的なVHSリリース映画のムーブメントとその取り締まりには、女性に対する性的暴力が絡んでいたんです。でも、性的暴力の悪だけを扱うと、物語として描ける幅が狭くなってしまう。そうではなく、人間誰もが持っていて、自分の奥底にいる悪、そういうものについて描きたいと考え、主人公を女性に変更したのです。

 「ビデオ・ナスティ」の作品そのものはすごく面白かったんです。自分が描こうとしているキャラクターで掘り下げようとしていることと、当時の英国ホラー映画の周囲で起きていたことは呼応してるように感じました。当時は、これらの作品がきっかけで、次の世代の新たなサイコパスや殺人鬼を生むのではと考えられ、検閲が行われていたわけですから。

 それまでは映画館でなければ、そういった映像にはアクセスできませんでした。その後、ビデオで見られるようになり、家でも子供でも誰でも、そして何回もリピートとして見られることが、私たちの人間の脳にどのような影響、あるいは社会的にどんな影響を与えるのかが問われました。そのホラーにまつわる社会性が、この映画で描く舞台としてぴったりだと思ったのです。

――80年代にした理由と、VHSビデオやレンタルビデオショップをはじめとした、レトロな表現が現代では新鮮に感じます。プロダクションデザインなどへの工夫もお聞かせください。

 車や家具など全部を再現するにはお金も手間もかかってしまうので、実は、プロデューサー陣とは現代ものにしようかという話も出ていましたが、今の英国での検閲の状況はやはり当時とは姿勢が違うので、物語が成立しないのです。私自身が1980年代育ちで、そういう作品に育てられましたし、また、80年代というと、例えばファッションだったら肩パッドの入った原色の派手な洋服に大きなイヤリング、そんなイメージを持つ方もいらっしゃるでしょうが――私の記憶にある80年代の、割と茶色っぽく荒涼としたグレーな感じ、そんな英国郊外を舞台にしたかったのです。

 そして、それとは対照的に映像の世界はカラフルで、場合によってはおぞましいようなものが目を引きました。遊びがないような場所に住んでいる若者たちが、レンタルビデオショップでそういった作品のカバーを見ると、その世界観が豊かで楽しそうに見え、そこに行ってみたい、そう思わせるようなデザインだったのです。灰色の抑圧された世界、もう1つはカラフルな虚構の世界、最終的にその二つの世界の間に主人公が入り込んでしまう、そういう意図をもって作り上げました。

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