緑魔子が語る増村保造監督「盲獣」秘話 巨大女体像上での撮影は…
映画.com / 2024年9月7日 23時55分
国立映画アーカイブで開催中の「第46回ぴあフィルムフェスティバル2024」の招待作品部門「生誕100年 増村保造新発見!~決断する女たち~」で、「盲獣」(1969)4Kデジタル版修復の日本初上映が9月7日あり、船越英二扮する彫刻家のモデルを演じた緑魔子が上映後のトークに登壇し、当時の思い出を語った。
本企画は、8月25日に生誕100年を迎えた増村保造監督の未配信作品8作品を含めた13作品を紹介する特集上映で、「盲獣」は江戸川乱歩の同名小説が原作。視覚障害を抱え、女体に執着し、実母と共謀しモデルとなる若い女性をアトリエに拉致して作品を制作する彫刻家の蘇父道夫(船越英二)の新たなターゲットとなったアキ(緑魔子)と道夫の逸脱した愛を描く。
この日のトークは、第5回大島渚賞を受賞し、増村保造監督の大ファンであるという工藤将亮監督が聞き手を務めた。
客席からの大きな拍手で迎えられ、最前列の熱烈なファンから花束を渡されて登壇した緑。物語の設定も、撮影も真冬だったことから「すごく寒かった」そうで、当時使われていたハクキンカイロ(オイル式のカイロ)を「ビロードの袋に入れて腰骨に当てていたんですけど、いっぱいやけどしました」と明かす。
大映のスターであった船越との共演を「もう当時は大俳優だったので、大尊敬です。あまり話はしませんでした。逃げ回ったり、触られたり(のシーンが多かった)で、あちらは大ベテランですし」と振り返り、「盲獣」と同じく変質的嗜好を持つ男性を描いたウィリアム・ワイラー監督の「コレクター(1965)」を挙げ、「テレンス・スタンプが大好きだったから、テレンス・スタンプみたいだったら……(笑)」と本音を吐露。
「盲獣」撮影時には、ほぼリハーサルはなく本番、緑の出演シーンは順撮りだった。とりわけ印象に残っているのが、彫刻家の道夫が作った巨大な女体像の上でのシーンだったという。
「(撮影に)初めて入ったときに、ステージに大きな上向きとうつ伏せの女体があったので、スタッフさんと一緒に『増村さん、何考えているんだろう?』そんな感じでした」と振り返り、船越とのシーンはワンカットの長回しだった。「(女体像は)ざらざらしていて、乳房など部分的にはふわふわしていた」「ものすごく走りにくいんです。今思うと、増村先生はああいう大きい女体につぶされて窒息死したかったんじゃないのかしら(笑)」と語る。「今考えると、(演じたアキは)男の人から見た女で、彼女はすごくかわいそう。『痛い』という場面、私は増村先生より普通だから……脳で考えると(SMやフェティシズムの表現に)私にはわからない部分もあるのかも」と自身の考えを述べた。
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