【何がすごい?】“異才”ヨルゴス・ランティモス監督、「女王陛下のお気に入り」「哀れなるものたち」など代表作5選
映画.com / 2024年9月26日 11時30分
最大の見せ場は、豪華キャストが火花を散らす絢爛豪華な演技戦だ。絶対的権力を握りながら、過食による痛風に悩まされる孤独なアン女王を演じたオリビア・コールマンは、ベネチアで女優賞、アカデミー賞で主演女優賞に輝いた。
また、女王の幼なじみで権力を握るレディ・サラ役のレイチェル・ワイズ、貴族に返り咲く機会を狙う新人侍女のアビゲイルを演じたエマ・ストーンが繰り広げる、泣き笑いの壮絶バトルも必見。両名はそろってアカデミー賞の助演女優賞にノミネートされた。ランティモス監督にとっては、その後「哀れなるものたち」「憐れみの3章」へと連なる、ストーンとの蜜月の幕開けとなった。ディズニープラスで配信中(15+)。
●「哀れなるものたち」(23)
自ら命を絶った不幸な女性ベラは、風変わりな天才外科医によって、自らの胎児の脳を移植され、奇跡的に蘇生する。彼女は「世界を自分の目で見たい」という強い欲望にかられ、大陸横断の旅に出る。
時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていくベラの冒険は、“故郷”ロンドンからリスボンを経て、豪華客船に乗ってアレクサンドリア、パリをめぐり、麗しくも大胆なタペストリーを紡いでいく。巨大かつ壮麗な美術セット、時代や文化を超越した衣装とメイク、映画音楽の概念を打ち崩すサウンドトラックと、ランティモス監督が培った美学が高純度で培養された、現時点での“最高傑作”といえるかもしれない。
第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で、最高賞の金獅子賞を獲得。第96回アカデミー賞では作品賞、ランティモスが2度目の監督賞候補となったほか、計11部門にノミネート。大人の体を持ちながら、新生児の目線を持つ主人公ベラを奔放に熱演したエマ・ストーンが、「ラ・ラ・ランド」に続き2度目の主演女優賞に輝き、美術賞、衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞の4部門を受賞した。ディズニープラスで配信中(18+)。
●最新作は「憐れみの3章」、韓国映画のリメイクやベストセラー小説の映画化企画も
いまや映画ファンにとって、避けては通れない存在となったランティモス監督の最新作が、エマ・ストーンと3度目のタッグを組む「憐れみの3章」。愛と支配をめぐる3つの物語で構成したアンソロジーで、3つの物語のなかで同じキャストがそれぞれ異なる役を演じる、上映時間165分の野心作だ。
現在は、韓国のSFコメディ映画「地球を守れ!」(チャン・ジュナン監督)のハリウッドリメイク版「Bugonia(原題)」に着手しており、こちらもストーンの主演が決定。「憐れみの3章」で第77回カンヌ国際映画祭の男優賞に輝いたジェシー・プレモンスも出演する予定だ。さらに、ベストセラー作家オテッサ・モシュフェグの小説「My Year of Rest and Relaxation(原題)」を映画化する企画も、プロット開発が始まったと報じられている。魂を揺さぶり、感性を刺激するランティモス監督のさらなる飛躍に期待したい。
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