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「国境ナイトクルージング」舞台は、なぜ延吉? アンソニー・チェン監督「若者の情緒をとらえるには“最高の町”」【アジア映画コラム】

映画.com / 2024年10月25日 7時0分

 そこで“若者の物語”を撮ろうと思いました。それはシンガポールではなく、他の場所で挑戦したかった。自分は英語と中国語しか喋れませんし、中華圏の映画人と長年付き合っているので、いつの日か“中国で映画を作りたい”と思っていました。中国で撮るなら、自分が行ったことのない町、そして自分が体感したことのない温度の中で撮りたいと考えました。私は子どもの頃からずっとシンガポールで暮らしています。年間平均気温は24度~32度。寒さというものを知らなかったです。ですから、中国で映画撮るなら、一番寒いところで撮れたらいいなぁと思いました。

――本作の前に、オムニバス映画「永遠に続く嵐の年」に参加されていますね。その中の1本「隔愛」を製作していますが、この作品の創作は「国境ナイトクルージング」と関わっていますか?

 「隔愛」は、私にとって非常に重要な作品でした。2020年のパンデミックになったばかりの頃、アメリカの映画会社NEONから、世界各国の監督を招き、コロナについて映画を作りたいと連絡が来ました。ちょうどその頃は、イギリスにいました。この企画に参加するなら、西洋的な視点ではなく、東洋的な視点でコロナの作品を撮りたいと思いました。そこで中国を舞台に作品を作ることにしました。ですが、当時のコロナを巡る状況は本当に大変で、中国に渡航することは不可能。ですので、リモートで作品を作りました。ロケハンからリハーサル、さらに現地の撮影まで、全部リモートで完成させています。

 あの時は本当に大変でしたが、チョウ・ドンユイと一緒に仕事できたのは非常に楽しかったです。ですから「国境ナイトクルージング」の脚本もまったく完成していない段階で、すぐに彼女へオファーしています。

――メインキャスト3名との共同作業はいかがでしたか?

 良い信頼関係を築けたと思いますし、撮影期間は本当に楽しかったです。脚本が完成していないのに「全員出演OK」となったんです。皆さんは映画を見て“3人の若者の物語”だととらえるはずですが、私から見ると、ある意味、今回は“私と彼ら3人の旅”だと感じています。

――「イロイロ ぬくもりの記憶」「熱帯雨」はどちらかというとリアリティを追求する作品。本作では“主人公の情緒の変化”をもっとも描きたかったのではないでしょうか?

 撮影前、カメラマンのユー・ジンピンさんと色々話しました。いままでの作品はリアリティを追求する作り方でしたが、今回はかなり衝動的な部分もありますし、リアリティを保ちつつも、少し幻想的な雰囲気も作りたいと考えていました。舞台の延吉は、とても魅力的で独特な町でした。中国の町ですが、町中にハングルが見られますし、周りに韓国語を喋っている人も多かった。まるで異郷にいるような感じです。

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