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「国境ナイトクルージング」舞台は、なぜ延吉? アンソニー・チェン監督「若者の情緒をとらえるには“最高の町”」【アジア映画コラム】

映画.com / 2024年10月25日 7時0分

 これまで中国の東北地方を描いた作品は、基本的にダサくて、寒いイメージが強かったんです。町の発展が止まっている“旧型の工業都市”として描かれることも多かった。でも、実際に行ってみると“色”があると感じました。密度から言えば、延吉のカフェ・喫茶店の数は、中国国内においては上海よりも多いです。韓国文化の影響でいまの延吉は素敵なカフェの街となり、若者もみんなオシャレで、ダサいといったイメージはまったくなかった。だからこそ、この町は「国境ナイトクルージング」の物語に一番ぴったりだと思いました。若者の情緒をとらえるには“最高の町”なんです。

――私の友達の多くも、本作の主人公たちに共感しています。「男2、女1」という組み合わせはある意味王道ですよね。映画ファンであれば、すぐにフランソワ・トリュフォー監督作「突然炎のごとく」を連想すると思いますし、日本映画「きみの鳥はうたえる」(三宅唱監督)を思い出す人もいるはず。この「男2、女1」の設定にどのような思いを持っていますか?

 「きみの鳥はうたえる」はまだ拝見できていなくて、いつか見たいと思っています。私はいままで若者の映画を撮ったことがないので、物語をどう描くのか、色々と考えました。すぐにフランソワ・トリュフォー監督作「突然炎のごとく」が出てきました。あの映画は若者の情緒、精神状態を完璧に撮っています。もう1回「突然炎のごとく」を見直すことはありませんでしたが、「男2:女1」の設定にすることを決めました。ただし、本当に設定だけなので、物語の構成は全く異なると思います。私が最初に考えたのは「この物語は4日間という短期間の話にしたい」ということ。なぜなら、若者主軸で“長いストーリー”を書ける自信がなかったからです(笑)。

 もうひとつの理由は、“氷”を描きたかったから。冬の映画に関しては“雪”が登場しすぎていると思ったので「もういいかな」と。逆に“氷”はあまり注目されていませんよね。氷は本当に不思議な存在。水から氷になるまでは、そんなに時間がかかりませんし、その逆も然りです。短い瞬間に起こったことは衝動的であり、その一瞬の情緒は今後の人生にも大きく影響を与えていく。ある意味、これが一番描きたかったものなんです。

――“動物”の存在も、多くの評論家に評価されています。是枝裕和監督も同様のシーンを絶賛していましたね。

 脚本を書いていた時、ラストは「都市から自然に戻る」ことを意識していました。ですから、延吉やその周辺を色々探索して、その結果「長白山」を見つけました。地理的には半分が中国で、半分が北朝鮮という独特な存在で、面白いエピソードがたくさんありました。その中に古朝鮮の建国神話がありました。ある虎と熊が、人間になれることを祈っていますが、1カ月間蓬(よもぎ)と蒜(にんにく)しか食べられないと告げられると、虎は我慢できずに途中で諦めてしまいます。一方、熊は最後までやり遂げて熊女となる。ですから、朝鮮においてクマは母なる神の象徴となる動物。私が作った話ではないんです(笑)。撮影オフの日、延吉の動物園に見学に行きました。なかなか不思議な体験で、非常に印象深かったです。ですから、動物の話を映画の中に入れたんです。

――最後に次回作についてお聞きしたいですが、「イロイロ ぬくもりの記憶」「熱帯雨」を含めた“成長三部作”の第3弾の製作は進んでいますか?

 えぇ、“成長三部作”の3作目はすでに準備しています。来年の2、3月あたりに撮影を行う予定です。もちろん、同じくコー・ジャールーとヤオ・ヤンヤンが出演します。「イロイロ ぬくもりの記憶」のとき、コー・ジャールーはまだ11歳でしたが、いまはもう22歳、兵役も2年務めて、大人になりました。そろそろ3作目を完成させないと考えたんです。その他には「パラサイト 半地下の家族」のプロデューサーとともに、韓国映画を1本企画しています。

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