【「室町無頼」撮影現場ルポ】入江悠監督が明かす製作秘話 大泉洋×堤真一×長尾謙杜の壮絶アクションに迫る
映画.com / 2024年11月1日 15時0分
室町時代を舞台にした映画作品がほぼ存在しないため苦労はあったようだが、図らずも7年間という準備期間がプラスに働いたと、ふたりは語る。
入江「映画では、室町を舞台にした作品はほぼない。先行する作品がなく、参考にできるものがなかったのは難しかったのですが、研究者や大学の先生に取材をして調べていくと、意外とアナーキーな時代で封建制度もそれほど確立されていなかったということがわかりました。それで、描く自由度はあるのかなと気が楽になって、『マッドマックス』のような世界観でもいいのかなと舵を切れました」
須藤「文献を相当読み込んでいましたよね」
入江「7年くらい室町や日本の中世についてずっと調べていました(笑)。身分が固定化されていない時代で、江戸時代のような武家社会でもなく、人々が色々な階層を行き来できた時代だととらえています。大泉さん演じる役も階層を明確にし難いけれど、顔が広くて慕われている。その自由度も含めてぴったりだと思いました」
どれくらい脚本の改稿を重ねたかについては、「分からない」と苦笑いを浮かべるふたり。
入江「20稿じゃきかない。最初は3時間くらいの尺の脚本でしたから。それを2時間の映画にすべくブラッシュアップしていったわけですが、室町時代を調べ過ぎて色々入れたくなっちゃうんですよ。不要な部分を見つけて削ぎ落すという意味では、7年という期間は良かった。初期の脚本には一休さんも妖怪も出てきていましたから(笑)」
今作で大泉が息吹を注いだ蓮田兵衛は、己の腕と才覚だけで混沌の世を泳ぎ、ひそかに倒幕と世直しの野望を抱く無頼漢。古き世を終わらせようと画策するがゆえに、自ら「捨て石」となろうとする剣の達人だ。自らの役どころについて、深い考察を明かしている。
大泉「本当に死と隣り合わせの時代だったのだろうなというのは、コロナ禍を経験した今、想像ができましたよね。さらに、室町時代の政府はその状況に、おそらく何も対策を打たなかった。そこで蓮田兵衛という人は、自分の命というものはもうどこか諦めていても、他の人のために何とかこの状況を変えてやる。そういう覚悟みたいなものを、胸の中に強く持って演じていました。本当にそれだけを思って。戦う中で仲間ができてくるのだけれど、その仲間も含めなんとかみんなを死なせたくないという思いで、頑張っていました」
報道陣に公開されたシーンは、腐り切った幕府を倒そうと奮起する兵衛(大泉)のもとに集った無頼たちと、幕府から京の治安維持と取り締まりを任された悪党一味の首領・骨皮道賢(堤)率いる荒くれ者300人が御所前で激突するシーン。はったい粉(原料は麦)を使った粉塵が舞うなか、680坪の敷地に組んだ2200平米のオープンセットで、俳優陣は嬉々とした面持ちで躍動した。
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