ブラジル出身の気鋭の監督が明かす、「タイタニック」の楽曲を使用した理由【第37回東京国際映画祭】
映画.com / 2024年11月2日 17時5分
東京・日比谷、銀座、有楽町エリアで開催されている第37回東京国際映画祭のコンペティション部門作品「死体を埋めろ」のQ&Aが11月2日、TOHOシネマズシャンテで行われ、監督・脚本・作曲を担当したマルコ・ドゥトラ監督が登壇した。
ブラジル・サンパウロ出身の映画監督・作曲家で、ロカルノ国際映画祭で銀豹賞を受賞した「狼チャイルド」(2017)などで知られるドゥトラ監督が、アナ・パウラ・マイアの小説を映画化した本作。ブラジルの片田舎で、路上ではねられた動物の死体を回収する仕事に従事しているエジガルは、常に暴力的で異様な悪夢に悩まされている。ガールフレンドのネッチと一緒に今の生活から抜け出したいと考えているエジガルだが、ネッチがカルト宗教に入信したことを知り、彼女を取り戻すために旅に出る……という物語だ。ドゥトラ作品の特長である、超現実的で奇想天外なストーリーを語りつつ、社会や宗教に対する痛烈な批評を投げかける。ミゲル・ゴメスの「熱波」(2012)を撮影したフゥイ・ポサスによる撮影も印象深い。
映画上映後、登壇したドゥトラ監督は「実はこの映画が完成したのが1カ月前なんです。パンデミック前は舞台挨拶に登壇していましたけど、こうやって登壇するのはそれ以来。本当に久しぶりなんですが、それが東京国際映画祭ということで、とても興奮しています」と挨拶。さらに「ここ1カ月、いろんなところで上映しました。まずはスペイン(シッチェス・カタロニア国際映画祭)でワールドプレミア上映が行われて、自分の出身地であるブラジル(リオデジャネイロ国際映画祭)、それからロンドン映画祭でも上映されましたが、地域ごとに反応が全然違うんですよね。わたしは映画というのは観客に観てもらってはじめて完成するものだと思っていますが、映画を本当に理解するのはそのときだと思う。そもそもこの映画というのが、アナ・パウラ・マイアさんの小説に基づいた作品であり、非常に謎めいたものがあるんです。それと同時に黙示録的なものを見せている作品なので。それぞれ反応が違うなと思いましたね」と各国の反応について語った。
劇中では、主人公のエジガルとネッチの思い出の作品として、ジェームズ・キャメロン監督の大ヒット作「タイタニック」について言及される場面があり、同作の主題歌である「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」のピアノ版が流れてくる。その意図について質問されたドゥトラ監督は、「『タイタニック』に関しては思い出があるんです。16歳か17歳のときにあの映画を観たんですが、当時はピアノを習っていたんです。もちろん今でも弾きますし、演奏も自分でやっていますが」と前置きしつつ、「実は『タイタニック』のくだりは原作小説にはなかったんですが、エジガルとネッチがロマンチックな会話をしているところの脚本を書いているときに、ネッチにピアノを弾いてもらって、そこで悲しみや死を連想するようなことを言ってもらいたいなと思ったんです。そのときに『タイタニック』がピッタリだなと思ったわけです。小説のテーマも、死や悲劇ということがあるので、そこから脚本がうまくまとまり出したので、それでほかの部分でも使うことにしたんです。90年代の曲としても大好きな曲ですしね。ただ曲の権利の許諾を得るのに1年かかりましたが、曲を使うことができて良かったです」とほほ笑んだ。
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