アピチャッポン・ウィーラセタクンの展覧会が開催 ティルダ・スウィントン参加作品、坂本龍一へのオマージュ作も
映画.com / 2024年11月3日 11時0分
フランスで毎年秋におこなわれる「フェスティバル・ドートンヌ」の一貫として、アピチャッポン・ウィーラセタクンの展覧会がポンピドー・センターで開催されている。ビデオを用いたインスタレーションとVR展の2つを同時開催、さらに短編も含めた映画の特集上映と、パリで初めてアーティストとしての彼の全貌を紹介するものになった。
ポンピドー・センター前にある、ブランクーシの元アトリエを用いた「夜の粒子」と題されたインスタレーションの展覧会は、今回のために制作されたティルダ・スウィントンを被写体にした作品や、すでに発表したものを含め、11作品を展示。アトリエはもともと自然光の入る明るい空間だが、これらの映像作品のためにアピチャッポンは光を遮断し、暗い空間に作り変えた。「最初は光に溢れたこの有名な場所を使うことに恐れ慄きましたが、異なる方法でこのスペースとコミュニケートできるのではないかと考えました。ブランクーシは自然を観察し、彫刻によってムーブメントを捉えた。そこには生やムーブメントに対する祝福の思いがあったと思います。僕も方法は違っても、同じことをしていると思います」と、内覧展を訪れたアピチャッポンは語った。
作品のなかには、9編の映像が並べられた「Video Diaries」のように、あえて音を消して上映しているものもある。それはあまり広くない空間のなかで、いくつかの音が反響し合い、アンビエントな世界を構築することが計算されているためだ。
「January Stories」という作品では、スウィントンが部屋の中で、じっと物思いに耽っているような様子に、チャプチャプと定期的な音が被さるのだが、のちにそれは古びた扉が水に浸り立てている音だとわかる。まるで「ししおどし」のような心地良いリズムが、観る側を瞑想世界に誘う。
「自分にとってインスタレーションは映画とは異なり、観客とのインタラクティブな対話。サウンドも映像と同様に重要です。この展覧会では、足を踏み入れた観客が水の流れる音や些細な物音に敏感になり、この空間を五感で共有できるようにしたいと思いました」
坂本龍一が音楽を手がけた「Solarium」では、画面が左右に二分割され、右に寝ている男の顔、左には背中を向けて寝ている女。やがて女の顔(スウィントン)が映ると、彼女は目を開けたまま眠っているようであり、右の画面には彼女が見ている夢の映像と思われるような風景が写し出される。
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