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アピチャッポン・ウィーラセタクンの展覧会が開催 ティルダ・スウィントン参加作品、坂本龍一へのオマージュ作も

映画.com / 2024年11月3日 11時0分

 本展は、アピチャッポンがファンだったという坂本龍一にオマージュを捧げたものでもある。「僕は学生の頃から坂本龍一の音楽が大好きで、どこに行くにもイヤホンで彼の音楽を聴いていました。彼の音楽と一緒に育ったようなもの。だから縁があって彼とコラボレートできたことはとても光栄でした。あるとき彼と一緒に食事をしたとき、フォークが何かにぶつかってチンと音を立てたんです。彼はその音をとても気に入って、その場で録音していた。その現場に遭遇して、日常の中のアコースティックサウンドがとても美しいと気づかせてもらったし、彼の好奇心にとてもインスパイアされました」

 一方、再び坂本龍一が音楽を手がけた「太陽との会話」と題されたVR展は、あいちトリエンナーレの委嘱を受け、日本のクリエーターたちと共同制作をした2022年の作品である。小グループごとにヘッドセットを装着するインスタレーションは、目の前に古代の銅像のようなものが現れたり、白い球体(太陽)が昇る様子を間近に目にしたり、自身の視界が宙に浮いたりと、まるで宇宙空間を漂ったかと思えば、唐突に巷の群衆を目撃したりする。古代から現代まで時間をすり抜けるような感覚、あるいは世界の創造に立ち会うような不可思議な旅が体験できる。ふだん触れられないもの、見えない何かを体感させるに近い、VR体験としても神秘的なものと言える。

 最近作「MEMORIA メモリア」(2021)と、短編の上映回には、ティルダ・スウィントンも参加し、監督とトークを開催した。後者では、アピチャッポンから影響を受けて撮ったという、スウィントン自身が撮影した短編「Will We Wake」も上映。赤ん坊の顔を映し続けている映像であるものの、生の不思議を感じさせる。

 2002年にカンヌ国際映画祭で審査員を務めた折に、「ブリスフリー・ユアーズ」でカンヌに参加していたアピチャッポンに出会ったスウィントンは、彼の作品に出演することになった経緯について、「わたしたちはお互いやりとりするようになってすぐに、映画における夢の存在、睡眠の存在について語り合うようになりました。わたしの子供たちの父親が、『映画のなかで眠れるなんて素晴らしいじゃないか』と言ったので、それをジョー(アピチャッポン)に伝えたらとてもウケて(笑)。それからすぐにふたりでコラボレーションする可能性について話し合いました」と語った。

 一方、アピチャッポンはかつて実験映画にはまっていた頃、スウィントンの出演しているデレク・ジャーマンの「ラスト・オブ・イングランド」を観て感銘を受けたことを語り、「その荒々しさ、彼の持っている怒りなどにも拘らず、この監督は本当に楽しみながら映画を作っている、ということが伝わってきたのです。ティルダに出会ったときにそれを伝えて、映画を作ることの楽しみをふたりで追求したい、という話になったんです」と意気投合した様子を回想した。

 VR展は会場の都合で10日間だけとなったが、レトロスペクティブは11月9日まで。アトリエ・ブランクーシの展覧会は1月6日まで開催中。(https://www.centrepompidou.fr/en/program/calendar/event/LJeRZIl)

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