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アカデミー賞に挑む、カンヌ発の2大異色作【ハリウッドコラムvol.359】

映画.com / 2024年12月15日 10時0分

 「エミリア・ペレス」は、フランスの巨匠ジャック・オーディアール監督によるクライムミュージカルコメディ映画である。果たしてそんなジャンルがあるのか知らないが、これまでにないジャンルの融合を実現した意欲作だ。メキシコシティの弁護士リタ(ゾーイ・サルダナ)は、麻薬組織のボス・マニタス(カルラ・ソフィア・ガスコン)から、意外な依頼を受ける。通常なら違法行為への協力を求められるところだが、マニタスが望んだのは性別適合手術を受けるための法的支援だった。マニタスは「女性になりたい」と告白し、その過程で生じる複雑な問題の解決をリタに託すのだ。

 リタは見事にその仕事をこなし、マニタスはエミリア・ペレスという女性として新たな人生を歩み始める。しかし、これは物語の3分の1に過ぎない。その後も予測不能な展開が待ち受けており、それらがミュージカルという表現手法によって鮮やかに描き出されていく。まるで新しい料理のように、思いもよらない素材の組み合わせなのに、絶妙な味わいを生み出しているのだ。

 両作品は、それぞれの方法で型破りな挑戦をしながら、確かな手応えのある作品に仕上がっている。カンヌ国際映画祭とアカデミー賞の価値観が確実に接近していることの証といえるかもしれない。

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