イザベル・ユペール「謎が残っているからこそ想像力が働く」 「不思議の国のシドニ」日本で撮影の愛と再生の物語、意外性あるラブシーンにも言及
映画.com / 2024年12月15日 15時0分
(C)2023 10:15! PRODUCTIONS / LUPA FILM / BOX PRODUCTIONS / FILM IN EVOLUTION / FOURIER FILMS / MIKINO / LES FILMS DU CAMELIA
フランスの名優イザベル・ユペールが主演し、日本でロケを行った映画「不思議の国のシドニ」が公開された。喪失感を抱えるフランス人作家シドニが初めて日本を訪れ、伊原剛志が演じる編集者の溝口とともに各地を旅することで、シドニの心が再生していく様を美しい映像とともに繊細に描いた作品だ。これまでに幾度となく来日し、2021年第34回東京国際映画祭のコンペティション国際審査委員長も務めるなど、日本とはゆかりの深いユペールに話を聞いた。
※本記事には作品のネタバレとなる記述があります。
<あらすじ>
フランスの女性作家シドニは、自身のデビュー小説「影」が日本で再販されることになり、出版社に招かれて訪日することに。見知らぬ土地への不安を感じながらも日本に到着した彼女は、寡黙な編集者・溝口健三に出迎えられる。シドニは記者会見で、自分が家族を亡くし天涯孤独であること、喪失の闇から救い出してくれた夫のおかげで「影」を執筆できたことなどを語る。溝口に案内され、日本の読者と対話しながら各地を巡るシドニの前に、亡き夫アントワーヌの幽霊が姿を現す。
――エリーズ・ジラールが監督を務めた本作は、長編デビュー作「ベルヴィル・トーキョー」(2013)のプロモーションで初来日した経験が、構想のきっかけだとジラール監督は明かしています。ジラール監督の実体験や日本への個人的な思い入れも、シドニという主人公の役作りに反映させたのでしょうか?
ユペール:私は日本で撮影されるということよりも、シドニが遠い国で、自分を見失っていたものをもう一度再発見するというテーマに惹かれました。もちろんエリーズの体験が基になっているのでしょうが、やっぱりその場所が(フランスに近い)スイスなどではなくて、遠い日本というのが、邦題にもある“不思議の国”というイメージに重なると思います。ですから、私はエリーズから、この題材で映画を作ろうと決めた彼女の経験や動機は敢えて聞かなかったのです。謎が残っているからこそ想像力が働くし、私の自由に演じられると思ったのです。
――あなたは長年のキャリアで国際的に活躍し、アジアではフィリピンのブリランテ・メンドーサ監督、韓国のホン・サンス監督の作品にも出演しています。日本での撮影経験はどのようなものになりましたか?
どんな国で撮影する際も、私は女優として現場に呼ばれて、監督が撮りたいカットのために演技をする。そういう形で映画に参加するので、どんな国でも違いはあまり感じないのです。フランスで撮っていても、監督やストーリーによって、撮影の仕方は変わってきますから、俳優の私はそれに順応するだけです。ですから、日本でもどこの国の現場においても、気詰まりだとか不快に感じるようなことはなく、いつでも未知のものに臨む、そんな心持ちでいます。
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