1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 映画

相米慎二とは“何者”か? 黒沢清、行定勲、瀬田なつき、森井勇佑、山中瑶子が語り尽くす「演出家として敵わない」

映画.com / 2024年12月23日 17時0分

 黒沢監督にとって初めての相米作品は、親しかった特権で観たデビュー作の「翔んだカップル」の3時間バージョン。アイデアを求められて試写で観たというが「せっかくアイデアを出した部分はカットされていて、その理由を聞いたら、『お前が良いって言ったから』って」と、笑い混じりで苦渋のエピソードも。同時に、完成した映画は「ものすごくぶっ飛んだ物語で、この人は物語はどうでもいいんだなと思った」と語りつつ、「物語のことをようやく計算し始めるなど、作品に変化があったのが『お引越し』あたり」と相米監督の変化も語った。

 作品のなかで物語を語りながらも、俳優の躍動する肉体を上手く使った演出をみせている、新世代を代表する山中監督と森井監督。「3テイク以内で撮影を終わらせようと心がけている」という山中監督は、入念なリハーサルやテイクを重ねるといわれる相米監督のことを頭に浮かべながら「何度も(俳優に)やらせるものか!」と現場に臨んでいると語る。

 森井監督も同意しつつ、その裏には「相米監督のメイキング映像を観て、俺は(こんな風には)できないと思って、どうすればいいのかを考えてのこと」だそう。

 東京藝術大学で黒沢監督にならった瀬田監督は、黒沢監督から“相米慎二は反面教師だ”といった授業を受けたという。「(相米監督のように)およそ100テイク目までいくか、1テイク目で撮り終えるか、どちらか」という話を聞き、「一度くらい100テイクぐらい撮ってみたい」が、全く想像がつかない次元なので、「回数を重ねて、何か失われていくものがあるのかも」と少ないテイクで押さえるようにしていると語る。

 行定監督の現場はリハーサル、テイクともに重ねるという意味では、相米監督に近しいともいえる。それに対しては「飽きるぐらいのときがお芝居的にいいかな、と(思って)」。話によれば、相米慎二は明確な“OK”を出さず「どう動くんだ」「それでいいのか」と常にスタッフや演者に投げかけていたそう。「時間の制約の中で撮りたいものを撮るために、どうしても答えを言ってしまいがちな撮影の中で、それだけのことができるのはよっぽどの忍耐と、どこかで破綻してもいいという覚悟がないとできない」と力強く語った。

 相米監督の現場にも入っていた黒沢監督は、「お引越し」以降のカメラは「“光”の扱い方が凄く良い」と俳優への演出以外にも触れた。「撮影した『お引越し』栗田豊通さん、『夏の庭 The Friends』篠田昇さんの力と、相米さんが俳優の演技よりも“光”を優先している結果が繋がっているのだと思う」と“破綻しなくなった”相米映画「お引越し」「夏の庭 The Friends」を絶賛。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください