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死を想って48歳で初めてのセックスを体験する主人公の孤独が美しい「ブラックバード、ブラックベリー、私は私。」【二村ヒトシコラム】

映画.com / 2024年12月30日 21時0分

▼年齢を重ねた女性にとってのセックスの切実さを描く映画

 中年の女、あるいは初老の女にとってのセックスの切実さを描いているのは、先月このコラムで紹介したやはりとても美しい映画「山逢いのホテルで」と似ている。あちらの主人公クローディーヌも、エテロとはタイプは全然ちがうが、やはり秘かにとても自由な女だった。どちらにせよ恋愛やセックスは昼間の社会に祝福されるものではない。恋愛で祝福されようと思ってはならない。恋愛は秘密だ。秘密を守ることと引き換えに自由を得ることがセックスだ。

 だが、もしかしたら彼女自身がどんなに強い意志で孤独とともに自由を指向していても、彼女の肉体そのものが孤独を裏切る人生に、これからなっていくのかもしれない。自分の死のことをみつめたからこそエテロにはセックスが訪れ、そのセックスが恋愛の楽しみを連れてくると同時に、肉体への意識も連れてきてしまったのだから仕方がない。

 エテロは、がんこな意志が自分の肉体の自由によって裏切られてしまうほど「自由」だったのだ、とも言えるかもしれない。

 主人公が自らの自由さがもたらした事態にとり乱し、つらいのか嬉しいのかもわからず声をたてて泣き、これからもつづく彼女の人生はどうなっていくのだろうという問いでブツッと映画が終わるのも「山逢いのホテルで」と同じだ。問いは映画を観た我々にむかって開かれている。

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