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坂本龍一幻のドキュメンタリー「Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto」鑑賞レポート【109シネマズプレミアム新宿特別上映】

映画.com / 2025年1月21日 21時0分

 18時から23時過ぎまでのこの日のプログラムは、第1部「Ryuichi Sakamoto | Opus」(空音央監督/2024)、第2部「Ryuichi Sakamoto:CODA」(スティーブン・ノムラ・シブル監督/2017)、第3部「Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto」4Kレストア版(エリザベス・レナード監督/1985)という構成だった。特別イベントということで、坂本さんの誕生日を祝うパネルがスクリーンの入口に設置された。無地ステッカーと筆記具が近くに置かれ、観客は坂本さんへのメッセージを書き込み、パネルに貼り付け、参加者が映画鑑賞とその感想もお互いに楽しめる仕様となっていた。

 109シネマズプレミアム新宿では、坂本さん監修の下で設計された、より極限までリアルな音を追求した音響システム「SAION -SR EDITION-」が、全スクリーンに導入されており、開館以来坂本さんのファンはもちろんのこと、音や音楽を愛する多くの人々にその上質な音響体験が知られている。上映開始を知らせるチャイムも坂本さんオリジナルのものだ。筆者はすでに同館を何度か訪れているので、本イベントでも最高の体験ができるであろう安心感と、未見の作品への期待に胸を躍らせ、着席した。

 1作目「Ryuichi Sakamoto | Opus」は、坂本さん最後のピアノ・ソロ演奏をスタジオで記録した、最初で最後の長編コンサート映画だ。長い闘病のため痩せた姿に胸が痛むが、坂本さんは時折古く懐かしい友人に出会った日のような優しい笑みを浮かべてピアノに向かい、自身が選んだ楽曲を一音一音慈しみながら奏でる。ジャケット上に浮き出た肩甲骨の動きは、肉体を離れ、音楽を通して天界へ向かう天使の羽のようにも見えた。筆者にとって本作鑑賞は3度目だったが、毎回涙がこみ上げてしまう。同様に、客席ですすり泣く観客も少なくないようだった。上映後には、静かではあるが長い拍手が沸き、坂本龍一という音楽家の人生と魂が込められた作品であり、とりわけこの劇場で何度も鑑賞することの重要性を実感させてくれた。

 休憩をはさんで、2作目「Ryuichi Sakamoto:CODA」へ。坂本さんの初の劇場版ドキュメンタリーだ。最初のがん発覚からの生還、福島原発事故後の環境活動、映画音楽への取り組み、自然や環境音への広く深い探求など、坂本さんの長期かつ多岐にわたる仕事と思索を、坂本さんとともに旅するようにめぐることができる。健康的で、エネルギッシュな在りし日の坂本さんと、その仕事風景に胸が熱くなり、常に音楽だけではない世界と社会への関心、知的好奇心を持ち続けた坂本さんから多くのことを学ぶことができる1作だ。

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