「起こりえない」災害が現実のものとなった――LA山火事の“いま”と“これから”について【ハリウッドコラムvol.360】
映画.com / 2025年1月23日 18時0分
Photo by Justin Sullivan/Getty Images
大地震(「カリフォルニア・ダウン」)、火山噴火(「ボルケーノ」)、竜巻(「デイ・アフター・トゥモロー」)、エイリアンの襲来(「インデペンデンス・デイ」)、核爆発(「ターミネーター2」)、津波(「2012」)……。ハリウッド映画のなかでロサンゼルスはいつも悲劇に襲われてきた。
それは、クリエイターたちがこぞってこの街を破壊することを選んだのは、自分が住む場所だから遠慮はいらないという気持ちと、起こりえないからという奢りがあったからかもしれない。観客もそうした映像をみるたびに、さすがにここまでひどいことは起きるわけがないと、笑って楽しんでいた。
そしていま、その「起こりえない」災害が現実のものとなっている。1月上旬から広がる山火事は、まるで映画のワンシーンのように複数の街を包み込んだ。消防隊員の決死の活動で被害の拡大は抑えられているものの、とくに高級住宅地のパシフィック・パリセーズは壊滅状態にある。
ロサンゼルスといえば、ビバリーヒルズやハリウッドヒルズが有名だが、パリセーズはそれらとはまた違う魅力を持つ高級住宅地だ。1920年代から開発が始まり、当時のハリウッドスターたちが「秘密の隠れ家」として選んだことで知られる。セレブやスタジオ重役たちが今も好んで住むのは、この地域ならではの特権的な環境があるからだ。
太平洋岸に沿って起伏のある丘陵地帯が広がり、その斜面に建つ邸宅からは絵葉書のような海の景色が一望できる。周囲には豊かな自然が残され、朝は山々から吹き降ろす爽やかな風、夕暮れには水平線に沈む太陽を眺めることができる。夜には、光害の少ない空に星々が瞬く。都会の喧騒からわずか30分ほどの場所に、こうした自然に囲まれた暮らしがある。
マット・デイモンやベン・アフレック、クリス・プラットなど、数々のスターたちがこの地を選んだのも不思議ではない。パリセーズの街並みそのものが、まるで映画のワンシーンのような美しさを持っているのだ。
だが、その贅沢な環境が、今回の火災を一気に拡大させる要因となった。乾燥した斜面には枯れ草が生い茂り、まるで導火線のように燃え広がった。さらに丘陵地帯特有の地形が風の通り道となり、火の勢いを加速させたのだ。環境要因としてはマウイ島のラハイナとかなり近い。実際、2023年8月にハワイを襲った山火事でも、観光地として知られる美しい港町が、乾燥と強風、そして地形的な特徴によって、わずか数時間で壊滅的な被害を受けたのだった。
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