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「起こりえない」災害が現実のものとなった――LA山火事の“いま”と“これから”について【ハリウッドコラムvol.360】

映画.com / 2025年1月23日 18時0分

 こうした悲劇が繰り返されるのには理由がある。カリフォルニアの冬の風物詩とも言えるサンタアナ風に、昨年夏からの深刻な干ばつが重なった。まるで「パーフェクト・ストーム」のように、最悪の条件が揃ったのだ。風速70マイルを超える強風に、湿度10%以下という乾燥。専門家たちは、この20年で山火事の発生頻度が著しく上昇していると警告を発している。気候変動が影響しているのは間違いなさそうだ。

 その被害の大きさは、数字を見ても途方もない。パリセーズ火災だけで2万3700エーカー(約96平方キロ)が焼失し、イートン火災でも1万4100エーカー(約57平方キロ)が燃え尽きた。東京23区の約4分の1に相当するこの面積には、約1万2000棟の建物が含まれていた。カリフォルニア州史上最も破壊的な山火事の一つとなり、15万人以上の住民が避難を余儀なくされ、27人が命を落とし、39人が行方不明という痛ましい状況に至っている。

 現在、消火活動は着実に進展している。パリセーズ火災の鎮火率は22%、イートン火災は55%まで上昇した(1月17日時点)。サンタアナ風も弱まり、最悪期は脱したとみられる。

 ただし、付け加えておきたいことがある。確かに被害は深刻だが、ロサンゼルスの特定の地域に限られている。ニュース映像だけを見ると、街全体が炎に包まれているような印象を受けるかもしれないが、多くの地域では普段通りの生活が営まれている。空気汚染がひどいときはマスクを着用するくらいだ。

 映画のなかのロサンゼルスはたしかにいつも破壊されている。だが、こうした映画で描かれるのは、災害を生き抜いた人たちが助け合い、生き抜いていく姿だ。

 そして、いま、現実のロサンゼルスで、その物語が繰り返されている。

 普段は個人主義の強いこの街で、人々が力を合わせ始めたのだ。ハリウッドのスタイリストたちは、映画用の衣装を被災者に寄付するという動きをはじめた。メディア企業やエージェンシーなどが相次いで寄付を宣言しているし、ビリー・アイリッシュやレディー・ガガ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズといったミュージシャンたちが「ファイアエイド」というチャリティコンサートを企画。学校やレストランや職場でさまざまな支援活動が広がっているのだ。

 街の復興には時間がかかるだろう。だが、コミュニティの絆は、すでに以前より強くなっているように見える。2028年のオリンピックまでに、ロサンゼルスが完全復活を果たすことを願わずにはいられない。

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