更新されていく集大成――アルモドバル監督作「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」を森直人&児玉美月が語り尽くす
映画.com / 2025年1月23日 20時0分
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ペドロ・アルモドバル監督の初の長編英語作品で、第81回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した最新作「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」のトークイベントが1月22日、都内で開催され、映画評論家の森直人氏、映画文筆家の児玉美月氏が登壇した。
本作は、病に侵され安楽死を望む女性と彼女に寄り添う親友の最期の数日間を描く物語。ウェス・アンダーソン監督作品やジム・ジャームッシュ監督作品の常連として知られ、「フィクサー」でアカデミー助演女優賞に輝いたティルダ・スウィントンと、「アリスのままで」でのアカデミー主演女優賞に加え、世界三大映画祭すべてで女優賞を受賞したジュリアン・ムーアが親友同士を演じ、繊細で美しい友情を体現している。
昨年の東京国際映画祭の上映で初めて本作を鑑賞したという児玉氏。
児玉氏「大きな会場で満席のなかで映画を観ました。生と死を扱っているということで重めの内容かなと思っていたら、アルモドバルらしいユーモアに溢れた一作で、会場からは笑いも起きていました。いわゆる安楽死や尊厳死を掲げている映画ではあるのですが、これまでにもアルモドバルが描き続けてきた女性の連帯や、母と娘の関係を中心に据えて物語が展開されるので、やっぱり女性同士の関係性に非常に興味を持っている監督なんだなと改めて感じました」
森氏は、その言葉に大きくうなずきながら、アルモドバル監督の一貫した作家性に言及した。
森氏「僕も全く同じように感じました。例えば、早川千絵監督の『PLAN 75』やフランソワ・オゾン監督の『すべてうまくいきますように』といった尊厳死を扱った映画っていうのは人権問題も含めて近年非常に話題のテーマなんです。ただそういった映画は法制化に関して描かれることが多い中、アルモドバルはラテン語で“メメントモリ”と言いましょうか、本当に生と死を巡る本質的な問いかけを描く。これは彼がもうずっとやってきていることで変わらぬ姿勢を強く感じました。そこにさらに円熟味が増し味わい深い作品に仕上がっていてすごく好きな映画です」
ストイックに同じテーマを描き続けながらも次第に変化していく作品群に関して、児玉氏は「1986年に作られたアントニオ・バンデラス主演の『マタドール<闘牛士>・炎のレクイエム』についてのアルモドバルのコメントを読んだことがあるのですが、あの作品でも死をテーマに描こうとしたけれど、当時はまだ死というものを本質的に理解できていなかったので失敗した、というように語っていたんです。なのでこの映画を観たときに死が彼にとって身近になり、それに対する深い知見みたいなものが経年と共に生まれたんだろうなと非常に強く感じました」と語った。
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