「夢をかなえるゾウ」の作家:水野敬也インタビュー、初脚本作品「イン・ザ・ヒーロー」について
Entame Plex / 2015年3月6日 16時36分
――例えばアクションの部分などは脚本を書いている時点では完全に想像ですよね。それが実際の映像になったときはどんな気分でした?
「そこは完全に想像を超えていて、素直に感動しましたね。同時に、普通のセリフ1つとっても感動することもあり。それは作家には味わえない、おいしい部分でした。脚本家が思い描いている以上のものが見れる、そこは脚本家の醍醐味ですね」
――今作はこれまでの水野さんの作品とはちょっと違う、すごく熱気があるような気がしましたが。
「僕が日常書くものって、実用的な知識を入れようとするので、主人公のキャラクターは読者と等身大なんですよ。つまり、より共感できるものを選んでいるんです。ただ、映画となると主人公は共感できる部分もありつつ、同時に自分にはできないことをしてくれる、よりキャラクターを深める必要があったんです。主人公には特権というか特技があって、それによる欠点もある。1人の人間を描くにしても、その構成は違っていて、特に映画の場合は自分とは違う人、視聴者は非日常を味わいたいんですよね。その感覚を盛り込むことは、これまでとは全然違っていました」
――今作で特に思い入れのあるキャラクター、シーンは?
「唐沢さん演じる主人公の本城と、福士さん演じる一ノ瀬リョウが本当に素晴らしかったので、この2人のやりとりですね。特に本城は、基本的にはコミカルで笑いがとれるんですけど、シリアスなところではすごく変わる。人間って本来そういうものだと思うんですけど、実際にそれを演じるのは難しいと思うんです。僕はそこはどうすればいいのか、そして実際どうなるのか、当初わからなかったんですけど、完成した映像を見た時には本城という人間がそれを完全に両立させていいて。例えば、体育館でめちゃくちゃ熱く語った後に“おまえ、誰かのヒーローになれよ”って言うシーンも、僕の中ではすごくシリアスな感じだったんですけど、そこをちょっとコミカルに、緊張と緩和させている。それはスゴかったですね」
――水野さんは、本城みたいになりたいと思います?
「難しいですね(笑)。憧れる部分もあるし、生き様としてはかっこいいと思いますけど、死とギリギリのあの感じは正直ムリ。でも、実際のスーツアクターの方々はそれをやっているわけで……すごい仕事だと思います」
――脚本家として見る、今作の魅力とは?
「僕自身、実用書を書いてきているので、その要素は情報として様々な部分に詰め込んでいます。本編では、本城がそういったことを言ってたりするんですけど、それもあって人の生き方や考え方に吸収できる奥行きがある作品になったと思います。だから何度でも見れるし、見方によってそれが変わる。自分の生活に当てはまることはすごく多い作品になりました。もちろんエンターテインメント作品なので、普通に楽しんでもらえれば嬉しいですけど、そういった見方をしてもらえたら、また違った魅力があるのかなと思います」
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