64歳生活保護ロッカーに密着!太田信吾監督インタビュー
Entame Plex / 2017年10月8日 16時0分
――そこからどんどんと引き込まれていったと。
「タイトルにも付けた彼の故郷である大津の街にはかつて米軍キャンプがあって、そこで出会った将校の方との交流がロックに触れるきっかけになったり、彼の大津での生い立ちから歴史的な部分も見えてきたりして。ロッカーとしての表面的な面白さだけでなく、彼のバックボーンとかに興味が湧いてきて、実際に聞いた話から内容を固めていきました。今回、作品の中にはアニメーションパートもあって、いろんな角度から撮影していきました」
――3年もの期間にわたって密着すると、大変なことも多かったのでは?
「義隆さん自身公言されていますが、生活保護を受けて暮らしているんです。いろんなところにライブをしに行くので、お金がどんどんなくなっていくんです。そんなとき、僕たちスタッフにちょっと貸してほしいと。そのお金を工面するのが大変でしたね(苦笑)。でも義隆さんのために何とかしようと……決してイヤな感じではなく。ロックンローラーとしてのカッコイイ姿だけでなく、生活保護を受けるしかない今の生活面での苦境などギャップがあるところもすべてさらけ出してくれました。どうやったら生活保護から抜け出せるのかと僕らに相談もあって……それを一緒に考えたりしましたが、とても難しい部分でした。まだ解決していないです」
――義隆さんは現在64歳で今なおロックを続けている。そんな姿を目の当たりにして思うことはありました?
「すごいですよね。義隆さんと出会ったのは東日本大震災があった翌年でした。初めて彼のステージを観たとき、原発事故への怒りを曲にぶつけていて……。自分を締め付けるような声の出し方だったので、この人はどうしてこんなに苦しそうに歌うんだろう……本当はこんなこと歌いたくないんだけど、敢えて自分が歌わなきゃいけないという使命に駆られたかのような姿に、カッコイイというよりも衝撃を受けました。それは、俗にいう反戦ソングではなくて、ものすごく生々しい表現で。後々、密着していく中で分かったんですけど、義隆さんのご家族もお父さんが戦地に駆り出されたり、お母さんは空襲から逃げたりといったこともあったからこそ、歌詞や曲にも説得力を感じたんだと思います」
――彼のことを知らない世代も多いと思いますが、この作品をどんな人に観てもらいたいですか?
「特にこの世代に観てほしいというのはまったくなくて……。僕が彼とたまたま出会ったように、予想外の出会いでこの作品を観てくれたり、彼の音楽を聴いてくれる人が増えたらいいなと思います」
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