日仏の味覚が一皿に。フランス大使館で開催された一夜限りのオートクチュール晩餐会【イベントレポート】
FASHION HEADLINE / 2015年12月31日 20時0分
■箸に拘ったのは、寸法を大事にしたいという思いから(吉兆)
「フランス大使館の厨房で調理するというなかなかない機会でもありますから、日本料理をお出しするのにお箸を用意しました。フォークとナイフの文化とは別の文化を使って冬の味覚を存分に味わって頂きたいと考えました。箸に拘ったのは、寸法を大事にしたいという思いから。それから、日本料理にとって重んじたい季節感を表現するにあたっては、笹を切って器に見立ててアクセントにしました。また、素材については旬の、兵庫県の香住の香箱蟹などを今夜のために取り寄せました。日本料理の良さを伝えつつ、現代における一期一会を楽しんで頂けると嬉しいです」(吉兆・湯木義夫氏)
■今回の宴は特別な夜。メニュー開発には2ヶ月以上かけた(とらや)
「純和風のデザートを意識して、旬の食材を使ったアミューズとデザートをつくりました。アミューズは味噌を使った煎餅を焼き、その上に黒糖の羊羹、それからフランスのカマンベールチーズをのせています。とにかくこれまでにない驚きを感じてほしい、と思いましたが、このメニューの開発には2ヶ月以上の時間を要しました。今回の宴が特別な夜である上に、我々としてはコースの中でデザートを提供すること自体がほぼなく、初めてといってもいい希有な機会でありましたから、そういう意味でも多くの思いを巡らしましたし、たくさんの時間も要しました。通常の菓子作りを大切にしつつも、コースの流れを考えて作ることができた貴重な経験になりました。また、お土産のお菓子の2種については、日本の季節感を香りでも感じて貰いたいという思いを込めています。季節や日本の文化を伝えたいという考えは、コースの中の菓子と同じです」(虎屋・佐藤久雄氏、杉山康ニ氏)
■日本料理に匹敵するような料理文化体系があるのはフランス料理だけ(青柳)
「これまでもフランスの料理人と共同で料理したことはあります。しかしそれは、別々の皿で交互に……というものであって今回とは全く趣向の違うものです。今夜の晩餐会では、日仏の文化が同じ皿にのることに加え、同じ食材で作りたい!と考えました。こういう機会は希有で、新しい試みを実現できことは大変に喜ばしいことです。しかし、先だっての哀しい事件がありましたから、開催自体が危ぶまれたりもしましたが、大使のこんな時だからこそ怯むことなく、という思いと言葉に励まされて今夜を迎えました。具体的な料理や食材については、日本チームが結成された時にそれぞれのお店に食材を選んでもらって決めていきました。今回の企画では、僕は青柳として参加するだけでなく統括を任されていますから、その立場においてできることを考えた期間でもありました。例えば、チームのことや生ものを進んで食すことのないフランス人のこと。僕は、日本料理に匹敵するような料理文化体系があるのはフランス料理だけだと思っています。そういう意味でも今回の試みは非常に面白く、とても有意義な夜になりました。どこまで“深み”を追求できるか、それを確認するためのものでもあります」(青柳・小山裕久氏)
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