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【サスティナブルな社会科見学】吉野の風土で、ここでしかしか作れない酒を。循環する木の物語--vol.3

FASHION HEADLINE / 2016年5月18日 17時0分

奈良吉野の美吉野醸造

「貯木のまち」から車で東へ10分足らず。吉野川の風景を眺めながら辿りついたのが吉野の酒蔵である「美吉野醸造」。吉野林業のそもそもが、酒の運搬・醸造用の樽や桶であったことは前回の原木市&製材所めぐりでお伝えしたとおり。近年はホーロータンクなどに押されて姿を消した木桶仕込みの酒づくりが、最近また新たに評価されているそうだ。

美吉野酒造も2010年に60年ぶりの木桶仕込みを復活させて以来、毎年「百年杉 木桶仕込み」として発売している。しかし、美吉野酒造のすごさはそれだけではない。ディープな酒蔵見学がはじまった。

同じ蔵元でこれだけ風味が違うのかと驚きだった日本酒たち

■これまでの酒づくりとは正反対

案内してくれたのが専務の橋本晃明さん。7年前より杜氏でもある。まずはお米の話から…というところで、奈良は酒向けの米の産地ではないことを知らされた。「米どころ=酒どころ」であるように、常識では米は酒づくりにおける最大のこだわりどころ。しかし橋本さんは、奈良県産の米を取り入れつつも、そこにこだわりはない。

「山の米、平野の米。それぞれ水や土壌は違うけれどどちらも正解なんです。農家さんの思いを汲みながら、『この蔵にとっていい米』を使っていくことが大切だと思う」と橋本さん。

現在は奈良県産の『吟のさと』を使用。玄米の白っぽい部分が酒米の特徴

■ワイルドな麹づくり

麹室(こうじむろ)と呼ばれる麹づくりの部屋。ここで蒸し米に麹菌をふりかける。ここは50年前に吉野杉をつかって作ったそうだ。

電熱器と加湿器で温度と湿度を調整。杉は調湿にも優れる

美吉野醸造では、「総破精麹(そうはぜこうじ)」という、米全体に菌糸をまわす手法をとっており、室温は30度、湿度は70%~80%とかなりのムシムシ状態(通常は50%程度)。細菌に胞子を均一に振りかけて菌種を斑点状に入り込ませる「突き破精(つきはぜ)」と違い、こちらは大胆にも噴霧器で蒸し米に菌を振りかけるそう。なんだか、とてもワイルド。麹は、全体に菌糸がまわって真っ白な麹ができるという。

「麹は酒造りのDNAなんです」と語る橋本さんは「酸味」にこだわる。上質な酸味、旨みの強い酸味。麹づくりはこの後の「酒母(しゅぼ)」の工程にも関わり、絶妙な酸味を生み出す大切な作業なのである。

■酵母無添加の酒母(しゅぼ)づくり

「酒母」とは仕込み前に後工程で合わせるもろみの発酵を促す酵母菌を培養する作業で、「麹室でつくった麹米+蒸し米+水+酵母」が基本セット。ただ、橋本さんはここで酵母を無添加にすることに踏み切った。3年間お世話になった剣菱酒造での「酵母は探すものではなくつくるもの」という、これまでの常識と180度違う発想に感銘を受けたからだという。

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