写真家・永瀬沙世--海外との仕事で再認識したアーティストステイトメントの重要性【INTERVIEW】
FASHION HEADLINE / 2016年6月20日 21時0分
気鋭の写真家・永瀬沙世。海外のクライアントやギャラリーと仕事をすることが増えた近年、永瀬は作品を言葉にするのは難しい、しかし文化の成り立ちが違う人たちに伝えるためのアーティストステイトメントの重要性を再認識しているという。後編では、永瀬自身の言葉と共に、彼女の作品集に込められたメッセージを読み解きたい。前編はこちらから
■『WATER TOWER』(2011)
『WATER TOWER』は古代がテーマになった作品だ。この世界にある、どこでもないどこか、そんな光景が続く。日本国内でも確かなものは何か、本質的な価値を知りたいという見えない欲求が高まった2011年にこの作品集が刊行されているのも興味深い。女性的な光やシルエットが横たわるようなカットもあれば、水を抱いてそびえ立つ水の塔もある。相反する存在が存在する世界を永瀬の視点で切り取った作品に思える。
「これは(東日本大)震災の1週間前に出来上がった写真集です。古代は大きな木の下に長老がいて、そこが不安になった時の心の拠り所になっていたんだと思います。大きな塔や木に宿る神様や精霊を拝むような気持ち。みんなが指標にする何かが分からない時代になってきたな、という思いで撮ったのがこの『WATER TOWER』です」(永瀬)
■『White Flowers』(2012)
『White Flowers』と題された作品は、実は“免疫”がテーマ。どこにでもありそうな日常のシーンの中に、度々登場する白い花々。この可憐な花こそが、永瀬を苦しめる存在だったとは...。そんな世の中の不条理を切り取った作品といえるかもしれない。
「もともとこの白い花が気になって撮りはじめたのが、この花を目の前にすると具合が悪くなってしまって...。結局、この花の花粉症だったんです。この花が好きなのに、自分の白血球はこの花粉を異物だとみなして攻撃するからくしゃみも出れば、鼻水も出る。そこで、免疫って何だろうって...。だから、一番最後のページに暗号のようなメッセージを残しました。“Your hay fever has nothing to do with your thoughts.”って。花粉症は思い過ごしだよって思うことで、この花を好きなことを肯定したかったんです」(永瀬)
■『Pink Lemonade』(2013)
色の三原色(シアン、マゼンダ、イエロー)のマゼンダが“ピンク”、イエロー が“レモネード”というイメージで作られた写真集。 真逆のものが惹かれ合い、近づいたり離れたりしながら生きていく感じが伝わってくる。
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