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ファッション×サイエンスで示す“美の普遍性”とは。ウェディングドレスデザイナー松居エリ--1/2【INTERVIEW】

FASHION HEADLINE / 2016年6月21日 19時0分

ウェディングドレスデザイナーの松居エリ

“美”とは何かと問われれば、あなたは何と応えるだろう?同じ服を見て、ある人は「シンプルだから好き」と言う。別の人は「装飾的で美しい」と。一体この感覚の差異は何なのか、美の定義はどこにあるのか。“美”に対する多くの疑問に、ウェディングドレスデザイナー松居エリは科学と数学を用いて提唱してきた。

4月30日に出版された彼女の作品集『Sensing Garment 感覚する服』では、松居が研究者らとコラボレーションし発表してきた服の図録やテキスト、独自のファッション哲学が収録されており、デザイナーではなくアーティストとしての才能も窺える。

一生に一度の晴れ舞台、結婚式で着用するウェディングドレスには完璧さが求められるが、多くの女性たちに圧倒的な支持を得ている松居のブランド「エマリーエ」は、一人一人の花嫁と真剣に向き合いながら、時には花嫁以上に完璧さを追求し、数センチの歪みも許すことがないという。今回は青山に構える「エマリーエ」のプライベートサロンにて、松居自身が定義する“美”とは一体何なのか、科学・数学との出会い、服と人間との関係性について訊いた。

ーーデザイナーとして約28年間服=ドレスを創り続けていらっしゃいますが、それ以外に科学者や数学者と多くのコラボレーションを経てコレクションショーや企画展を行っていますよね。それらはウェディングドレスとは全く異なる魅力があり、前衛的で素材やデザインも他では見たことがないものばかりです。そもそも、科学・数学との出会いは何がきっかけだったのでしょうか?

服創りを始めてから常々、二次元の平面図では困難を感じないにも関わらず、三次元の立体を把握するのはとても難しいと感じていました。平面図やドレスフォームでは完璧だと思えても、お客様が試着するとどうしてもシワが入ってしまい、その度頭を抱えていたのです。オートクチュールやウェディングドレスを創るには、一人をマスで捉えるわけにはいきません。既成服のようにサイズ分けして生産するのではなく、一人一人の体にあった最高の一着を創るためには女性の体を研究し、多様性に適応していかなければいけない。その目的がまた既製服でもほぼ完璧にフィットする道を見つけるきっかけになったのです。

ある時、一緒に働いていた理数系出身のスタッフの影響で物理学に出会いました。理数系や文系という言葉すら知らなかった私には、時間が4番目の次元であること、時間と空間という異質に見えるものを同様に扱うという発想自体が衝撃的で。数学が物理の謎を解く基礎であることを知り、それは三次元の立体でなぜシワや歪みが生まれるのか、消えるのかを解明していくことに繋がりました。情念、疑問、創造、科学、数学などあらゆるものが私の中で出会い、嵐が巻き起こったような体験でした。漠然と私の中にあった「なぜ?」がますます高く波打ち、答えを探求すると同時に服創りの活力と一体になっていったのです。

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