「自己」になることを許された服こそが“感覚する服”。ウェディングドレスデザイナー松居エリ--2/2【INTERVIEW】
FASHION HEADLINE / 2016年6月21日 20時0分
“美”とは何かを問いかけるウェディングドレスデザイナー松居エリは、4月30日に作品集『Sensing Garment 感覚する服』を出版した。同書では松居が研究者らとコラボレーションし発表してきた服の図録やテキスト、独自のファッション哲学が収録されており、デザイナーではなくアーティストとしての才能も窺える。
6年掛かりで完成した同書に込める強い想いの礎には、デザインに対する情熱と愛情、そして未来を担う若い世代へのメッセージがあった。
ーー“美”に対するこだわりや完璧なドレスを創るまでの過程を見て、松居さんの探究心には脱帽しました。当たり前のことに対しても疑問を持ち、解明していく姿はデザイナーであり研究者であり職人のようですね。そこまで松居さんを突き動かすものは一体何なのでしょうか?
私にとって服創りの原動力となっているのは、ウェディングドレスを着て輝く女性の姿。服がしっくりきた時の女性の高揚感は、その場の空気を変え、ドレスまで官能的に息づき始めるんです。それは彼女が彼女自身に出会う瞬間、「自己」になることを許された服、“感覚する服”なのです。服がこんなにも女性にとってかけがえのない存在であるのは、服が彼女自身を創るからでしょう。そんな女性たちの微笑みをまっすぐに目指し服創りをしていると、多くの疑問が浮かんでくるんです。気になるといても立ってもいられないというか。私にとっては自然のことなんですよね、知りたいから探るっていうのは。痒いから掻くっていう感じです(笑)。
ーー同書を拝読すると、理数系が得意でない私でも美に対する新たな解釈に気づき、服を違った視点で見る楽しさに触れたような気がしています。
私も、もともと数学ができなかったんですよ。高校からアートを専攻していて、数学の授業はボイコットしていました(笑)。前述したように科学と数学との衝撃的な出会いを経て、それまでとは世界が違って見え始めたんです。思考による創造への感動を知った私はますます探求するようになりました。私が体験したように、この本を手に取り読んで下さった方が、疑問に思ったり面白いと感じてもらえれば嬉しいです。
ーー作品集の出版に至った経緯を教えて下さい。
私のファッションショーを見に来て下さった工作舎の編集の方が、声を掛けて下さったんです。それから、私とスタッフで1年ほどで構成を仕上げました。その後デザインや編集など、細かい部分にまでこだわった結果、出版までに5年も掛かってしまいましたが。
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