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踏みしめる大地をもアートに変える「北アルプス国際芸術祭」の見どころ――夏の信濃大町アート旅2/3

FASHION HEADLINE / 2017年6月17日 7時30分

ジェームス・タップスコット《Arc ZERO》

北アルプス国際芸術祭のテーマ「水、木、土、空」が示すように、作品を巡りながら信濃大町を歩くと、山々の美しさ、集落のたたずまい、澄んだ水の清らかさに感動します。見たことのない風景が、新たなイメージや発想へと誘ってくれるでしょう。

「北アルプス国際芸術祭」ガイド―夏の信濃大町アート旅1/3へ戻る...

●2) ダムエリア―大自然と溶け合う造形と豊かな土
高瀬渓谷の絶景を背景に建設された大町ダムは、自然と文明の接点。別名「龍神湖」と呼ばれ、1969年に発生した大洪水をきっかけに建設された多目的ダムです。ダムのある高瀬川は、25キロ下流で犀川に合流、千曲川、信濃川と名前を変えて日本海に注ぎます。源流は北アルプスの槍ヶ岳。この水と人の相剋の記憶を残す場所で、合計4作品が鑑賞できます。

水力エネルギーの歴史を展示する「大町エネルギー博物館」の、幅38メートルの巨大な壁面に、淺井裕介さんは《土の泉》と題し、地元の土で絵を描きました。


淺井裕介《土の泉》photo by Tsuyoshi Hongo

淺井裕介《土の泉》photo by Tsuyoshi Hongo
淺井さんは「朝来ると猿が足場にいたり、川にカモシカが水を飲みに来たり、自然豊かな環境です。信濃大町で何度か土を堀りましたが、乳川の上流で採取された赤い土、そして濃い黒い土と、強い色の2色がすぐに見つかり、土地の豊かさを感じました」と話しました。動植物を基調にした無限に広がる文様は、大きな生物のなかに小さな生物がいて、さらに微細な生物たちが息づき、見ればみるほど発見に満ちています。信濃大町の住民、そして全国から集まったボランティアの筆跡が加わり、土地の生命力を吸い上げたかのような、有機的な世界が立ち現れました。


淺井裕介さん

地元の土が作品を描く際の画材となりました

そこから歩いて数分の温泉施設「こまどめの宿 心笑館」へ。2階のフロアでは、栗田宏一さんが「塩の道 千国街道」をテーマに、《土の道・いのちの道》を展示しています。日本海に沿って船で運ばれた塩、それらの塩が糸魚川に集まり、山を越えて信濃大町に至るイメージを作品化しています。栗田さんは1990年頃より、ありのままの土の美しさに目覚め、軽自動車に乗り、日本列島の全域で土の採集をはじめたアーティストです。土はそれぞれ干して、ていねいに石や植物の根を取り除き、ふるいで粒子を揃えると、目の覚めるような美しい表情を現わします。採取した地名が記されたそれぞれの土は、生命にとって欠かせない塩、そして土そのものが経てきた時間を物語り始めます。

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