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雪解け水のつくる湖と穏やかな人々の生活感「北アルプス国際芸術祭」の見どころ――夏の信濃大町アート旅3/3

FASHION HEADLINE / 2017年6月17日 8時30分

雪解け水のつくる湖と穏やかな人々の生活感「北アルプス国際芸術祭」の見どころ――夏の信濃大町アート旅3/3

芸術祭の楽しみには、作品鑑賞だけでなく、土地の人々との出会いや交流も含まれます。国内外のアーティストによって引き出された土地の魅力に触れると、グローバル化や都会のもつ限界、文明や人類の未来について、改めて考えるきっかけが生まれます。

「北アルプス国際芸術祭」ガイド―夏の信濃大町アート旅2/3へ戻る...

●4) 仁科三湖エリア―山々を映す湖と穏やかな人々の生活感
仁科三湖(北から、青木湖、中綱湖、木崎湖)は、糸魚川静岡構造線上にある、地殻の断層によって生じた湖。湖畔には「塩の道」が通り、日本海側の糸魚川からの山越えの道を、足腰の強い牛が運んできた塩は、ここで足の速い馬に積み替えられて信濃大町に入りました。木崎湖の湖畔には旅館や民宿が軒を連ね、その透明度から湖水浴ができるほど。ここでは4作品が鑑賞できます。


青木湖、中綱湖、木崎湖の3つの湖からなる仁科三湖エリア

フィリピン出身のアルフレイド&イザベル・アキリザン夫妻が、島の群れか、あるいは隊列を組んでパレードするかのような、数隻の船を湖面に浮かべました。この《ウォーターフィールド(存在と不在)》の作品、よく見れば、船には家々から持ち出された日用品が、えもいわれぬ組み合わせで搭載されています。それらは地元の人たちと共に集め、持ち寄った不用品。アーティストはこの作品を通して、環境破壊への警鐘、過疎化の寓意を表現しているといいます。波風に揺られるその姿は、可笑しくも、悲しくも愛おしくもあります。


アルフレド&イザベル・アキリザン《ウォーターフィールド(存在と不在)》photo by Tsuyoshi Hongo

対岸の桟橋には、人々との協働を通じて景色をつくり変えてきた五十嵐靖晃さんが、《雲結い(くもゆい)》という名で、湖と雲をつなぐ組紐を、地元の人々と組み上げました。細い綿糸320本をよりあつめ、25メートルの太い糸8本を準備し、その8本をみんなで天に向かって組み上げ、作品を完成させました。「この地域では、相互扶助のことを『ええっこ』と呼びます。養蚕が盛んな地域とあって、作業場で糸を巻いていたら、『糸巻きあるよ』とみんながもってきてくれました。糸には協働した人たちの手の痕跡が残っています」。人と人、命と命のつながり、言葉を超えたコミュニケーションを感じたという五十嵐さん。「僕自身、信濃大町に来てから、空を見上げる機会が増えました。海では水平につながる世界を意識していましたが、ここでは垂直方向、空からつながる世界を感じてほしい」。

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