金沢で390年の歴史を紡ぐ、老舗酒蔵「福光屋」の酒造り【前編】
FASHION HEADLINE / 2015年2月17日 20時0分
2013年にユネスコ世界文化遺産に登録された、日本人の伝統的な食文化“和食”。南北に広がり、四季がある日本には豊かな自然風土があり、そこで生まれた食文化もまた、これに寄り添うようにはぐくまれてきた。そして和食と同じく、日本が誇る食文化の一つである日本酒は、自然の恵みそのものだ。地域の風土や四季の自然を醸した酒造りを見せてもらうため、新酒の仕込み最盛期時期の老舗酒蔵を訪ねた。
■純米造り、百年水、社員蔵人 福光屋の酒造りの三つの要
六本木の東京ミッドタウンや都内の百貨店に直営店があることで、日本酒ファン以外にも名を知られる金沢の酒蔵・福光屋。日本酒から米発酵技術を生かしたコスメや食品まで手掛ける福光屋は、寛永2(1625)年に創業した酒蔵だ。『金沢』を著した作家・吉田健一が命名した「黒帯」、華やかで威勢のいい「加賀鳶」、高い地元シェアを誇る「福正宗」、長期熟成酒の「百々登勢」など10銘柄の日本酒を展開している。
多種多様な日本酒を手掛ける福光屋は、2001年よりそのすべてを純米造りに変えた。純米造りの酒蔵は増えているものの、出荷量が生産高万石単位の酒蔵では全国初の試みとして業界内外で大いに注目を集めた。「酒は米と水という自然の恵みに、微生物の働きによる自然の力が加わって生まれる。自然に敬意を払い、自然の力を引き出すための知恵や工夫を授かる場として酒蔵は存在します。純米蔵になることは、自然に還ることであり、必然の選択でした」と福光屋13代当主の福光松太郎さん。
そして純米造りを可能にした背景には、1960年から生産農家と土作りから共に取り組む契約栽培がある。顔の見える関係性があることで、高品質の酒造好適米がの安定確保できるようになった。
こだわりの酒米はもちろん、酒蔵にこんこんと湧く良質の仕込み水にも胸を張る。「百年水」と名づけられた仕込み水は、1世紀前に降った雨が、幾重にも重なった貝殻層を抜け、酒造りに欠かせない成分が溶け込んでいる。「昔と比べて造る酒の種類が増えて、もう少し広ければと思うこともありますが、百年水があるから創業以来の地を離れることはできないですね」と生産本部・部長の正司和利さん。
蔵人の後継者問題もあり、福光屋では1990年代から社員を蔵人として育成する「社員蔵人制度」を導入した。今では15名の社員蔵人が20から30種類ある商品の原酒を醸造している。ベテラン蔵人が伝統の技や経験による勘を伝授し酒造りを継承。更に数値化できるものはすべてデータにして勘の裏付けを取る。勘や経験、データによるシステム化、そのバランスをうまくとりながら酒造りに挑む。「昔は、杜氏がこれ!と決めたらその酒の味だった。もちろんおいしい酒も数多く生まれました。でも社員蔵人の良さは、時代や市場のニーズを反映した酒造りができること。特に当社は直営店もあるので、お客様からの声も直接お聞きできますからね」と正司さん。
後編に続く。
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