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【詳しく】クイーンビートルの浸水隠し「報告すれば運航停止は必至」「予約キャンセル対応の負担を避けたい」「疑義があっても会社の指示には従わざるを得ない」原因を分析 JR九州

FBS福岡放送ニュース / 2024年10月31日 12時41分

FBS福岡放送

博多と韓国・釜山を結ぶ「クイーンビートル」が浸水を隠し、運航を続けていた問題です。親会社のJR九州の古宮社長は31日、子会社のJR九州高速船が国土交通相に対し、改善報告と、安全統括管理者と運航管理者の解任と選任を届け出たと明らかにしました。

 

改善報告では、浸水隠しの原因について「当時の社長は、船員としての経験が長い安全統括管理者などからの「運航の安全に支障ない」「報告すれば運航停止の指示は必至」という意見を聞き、これを認める判断をしたとしました。また、予約のキャンセル対応の負担を避けたいという思いもあったとしています。

「安全最優先の判断」社長以下が行わず

親会社のJR九州・古宮社長(午前11時ごろ)

改善報告ではまず、2023年6月に国土交通相から「輸送の安全確保に関する命令」を受けたにもかかわらず、2024年9月に再び命令を受け、全国初の「安全統括管理者と運航管理者の解任命令」を受けたことは「極めて深刻な事態」としました。

さらに「浸水が発生している状態のまま、報告や応急修理の措置をとることなく、旅客を乗せて長期間にわたり運航を継続したこと、この判断に社長以下の各管理者が関わっていた事実は、安全管理体制にかかわる重大な問題」としました。

その大きな原因として、2023年7月に提出した改善報告に記した「安全最優先の判断を行う抜本的な意識改革」が社長以下の各管理責任者がみずから行っていなかったためとしました。

当時の社長「報告すれば運航停止は必至」

JR九州高速船の当時の社長は、船員としての経験が長い安全統括管理者や運航管理者の「運航の安全に支障ない」「報告すれば運航停止の指示は必至」という意見を聞き、これを認める判断をしたとしました。

背景には2024年1月に浸水で運休した際、予約のキャンセル対応で営業社員に相当の負担が生じていて、それを避けたいという思いもあったとしています。

当時の安全統括管理者と運航管理者「法令遵守の意識が希薄」

また、当時の安全統括管理者の考えは「浸水量は船体の規模からすると非常に軽微で、船首区画が浸水しても安全運航に支障はない」とする自身の技術的な根拠と判断によるもので、法令遵守の意識が希薄だったとしました。

当時の運航管理者についても「浸水が継続して発生しているのにクラック(亀裂)を疑わず、またクラックがあったとしても喫水線より上だと推測し、経過観察のみでよいと考えた」として、法令遵守の意識が希薄だったとしました。

船長「会社の指示には従わざるを得ない」

一方、船長は「安全運航に支障はないと考え、法令に関わる部分は安全統括管理者や運航管理者などが判断すると考え、また疑義があっても会社の指示には従わざるを得ないという意識などから、判断に従ったとしました。

また、浸水警報センサーが鳴らないよう、上にずらしたことについて、これを知った船員の多くは運航継続に疑問を持ち始めたものの、安全統括管理者や運航管理者などは翌月に計画していたドック入りまでもたせたいという思惑があったとしました。そして、船員の疑義や懸念が安全統括管理者や運航管理者などに伝わっておらず、普段から安全に関するコミュニケーションが十分でなかったことも一因と考えられると指摘しました。

具体的な再発防止策は

浸水警報センサー(JR九州提供)

その上で、二度とこのような事態に陥ることのないよう、安全管理体制を見直し、社員全員の安全意識の醸成と安全最優先の行動の定着・浸透を図り、信頼の回復に全力で取り組むとしました。

そして、再発防止のための施策として「安全意識の醸成と法令遵守の意識の浸透」「安全管理体制の機能強化」「報告と情報共有」「安全報告書の作成と公表」「JR九州によるガバナンス」の5つを掲げました。

具体的には、社員の行動規範として「安全の綱領」を掲げ、朝礼で唱和することや、今回の問題を風化させないためのパネルを設置すること、JR四国の連絡船で船長や管理業務の経験がある専門家を「安全に関するアドバイザー」として招き外部の視点を取り入れること、コンプライアンス教育の徹底、全社員が参加する「安全に関する社員総会」を年2回開き、直近のヒヤリハット事例を振り返り議論すること、問題が起きた際の報告・連絡は速やかにグループチャットで行い、その訓練を行うこと、親会社のJR九州の非常勤取締役がJR九州高速船の会議に参加し現場に赴き、業務の実態を把握すること、改善が確認できるまで毎月JR九州が進ちょく状況をモニタリングすることなどを盛り込みました。

航海日誌に「異常なし」浸水警報センサーは上部にずらす

海保による捜索(17日)

クイーンビートルはことし2月に浸水が分かったあとも、およそ4か月にわたり運航を続けていました。航海日誌に「異常なし」と記載したり、警報が鳴らないよう浸水センサーの位置を上にずらすなど隠ぺい工作を行っていたことも分かっています。また「検査の前日に元に戻した」とする証言も明らかになっています。

国土交通省は9月、輸送の安全の確保に関する命令を出すとともに、全国初となる安全統括管理者と運行管理者の解任命令を出しました。10月末までに改善報告書を提出するよう求めていました。

福岡海上保安部は船舶安全法違反と海上運送法違反の疑いで17日、クイーンビートルの船内と運航会社のJR九州高速船を家宅捜索しています。

年内の運休が決定

クイーンビートルは年内の運休が決定しました。運航の再開は未定としています。

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