「年金は追納したほうがいい」ってよく聞くけど、どれくらいの差が生まれるの?
ファイナンシャルフィールド / 2021年6月22日 23時10分
将来の年金に影響するから国民年金の保険料は追納した方が良い、と周囲から言われた経験はありませんか? しかし、追納金額が思ったよりも高く迷っている方も多いと思います。 そこで、今回は国民年金の保険料を追納する場合としない場合の差について見ていきます。
年金の追納とは
国民年金の追納とは、学生であるなどして収入が低い期間に猶予・免除されていた保険料を後日支払うことです。追納は最大10年間さかのぼって行うことができ、それを過ぎてしまうと追納できません。
将来、国民年金を満額受給するには40年分(480ヶ月)の保険料を支払わなければならず、支払っていない期間があればその分、減額された年金が支払われます。
3年以上前の部分について追納をするには、当時の保険料に加えて数十円から数百円、加算額を上乗せした金額を支払わなければなりません。
例えば、令和3年4月1日から令和4年3月31日までの間に、全額免除または猶予されていた平成30年度分の国民年金保険料を追納する場合、当時の保険料1万6340円に加算額20円を加えた1万6360円を納める必要があります。
なお、追納は国民年金のみに認められた制度であり厚生年金にはない制度になります。
追納によってどれくらい差が出る?
では、追納について基礎的な情報を確認したところで、追納によってどれくらい年金に差が出るか見ていきましょう。今回は追納による差を分かりやすくするため、下記の条件にて検証していきます。
・追納期間は2年分(令和元年度および2年度)で、それ以外に猶予や未払いの月はない
・今後も国民年金を納付して、将来は令和3年4月ベースの給付額で満額(78万900円)を毎年受け取る
・課税所得300万円
・令和3年度に追納
国民年金を追納しなかった場合
今回、国民年金の保険料が支払われていないのは2年分です。国民年金を追納しなかった場合、2年分(24ヶ月)が減額されるため、将来受け取れる老齢基礎年金の年金額は下記のようになります。
78万900円×456ヶ月÷480ヶ月=74万1855円
つまり、追納をしないことで受け取れる年金は毎年3万9045円減るということです。
国民年金を追納した場合
国民年金を追納した場合、国民年金は満額である年78万900円を将来受け取ることができます。追納する金額は2年分で39万5400円です(令和元年度分が19万6920円、令和2年度分が19万8480円)。
追納にて増加する年金額が年間3万9045円であることを考えると、およそ12.7年の間、年金を受け取れば元が取れる計算になります。65歳で年金を受給すれば、78歳になるころには十分元が取れるという計算です。
また、追納した保険料は全額所得控除になります。そのため、課税所得が300万円であるところ、追納保険料分が控除されることで260万4600円まで下がります。
すると、本来であれば所得税と住民税が合計で50万2500円生じていたところ、42万3420円にまで下がり、追納した年に限っては約7万9000円税金が安くなります(所得税は10%、住民税は簡潔に所得割10%のみで計算し、他の控除などについては考慮していません)。
結局追納するべき? しないべき?
あくまでこれは筆者の考えになりますが、正直なところ、追納するかしないかでいえば、余裕があれば追納するといった程度の認識でよいでしょう。
追納は年金額が増えるほか、節税メリットもあるとはいえ、国は高年齢者雇用安定法を改正して70歳まで働ける環境を作っていること、令和3年度からは年金額が66円下がっていることを考えると、今後も年金の受取開始年齢が後ろ倒しになり、さらに年金額自体も下がっていくことが想定されます。
であるならば、平均的な収入でそれなりに貯蓄ができている特に20代30代といった若手の方は、今回の試算ほどのメリットは得られない可能性があり、無理に追納する必要はないと考えます。自身で投資など運用できる方であればなおさらです。
ただし現在、年収が高く税金も高い人で、手元にお金があればあるだけ使ってしまうというような人であれば、節税と将来への備えも兼ねてぜひ追納すべきでしょう。
年金の追納については良く考えて判断を
国民年金の保険料を追納することで、将来受け取れる年金額が増え、過去に納付猶予や未納だった期間があっても年金を満額に近づけることができます。
しかし、年金制度の今後の改正によっては、追納するよりも自分でそのお金を運用に回した方が良い可能性もあります。
追納について悩んだ際は、年金制度が変化していくことを踏まえ、追納以外の方法で運用した場合と比較してどうなるか、追納より自己投資に使った方が将来につながるのではないかなど、広い視点から判断するようにしてください。
出典
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
小金井市 追納制度をご存じですか
執筆者:柘植輝
行政書士
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