亡き祖母から孫への生命保険金。受け取るときに課税対象になるって本当?
ファイナンシャルフィールド / 2022年2月22日 11時0分
祖母が亡くなった際、孫を受取人として契約していた生命保険の保険金を受け取った場合は、相続税の課税対象となるのでしょうか? 孫にお金を残しておきたいという思いで生命保険を活用しておられる人もいらっしゃるなか、自身が亡くなった際の保険金受取人である孫に対する、課税の仕組みについて解説します。
死亡保険金はみなし相続財産となる
被相続人が亡くなったことによって受け取った生命保険金で、その保険料の全部もしくは一部を被相続人が負担していた場合、相続税の課税対象となります。
そして、受取人が法定相続人である場合は非課税枠が適用されます。死亡保険金はみなし相続財産となり、相続税を計算する際の基礎控除額の計算とは別の非課税枠が設けられています。
みなし相続財産の非課税枠=(500万円×法定相続人の数)
また、みなし相続財産に該当するものは、生命保険金以外に以下のものがあります。
●死亡退職金
●「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税特例」の適用を受けていた場合の管理残額
●「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税特例」の適用を受けた場合の管理残額
●相続時精算課税の適用を受けて取得した贈与財産
●被相続人の死亡前3年以内に受け取った贈与財産
など
(参考:国税庁「相続税がかかる財産」(※))
孫は相続人とはならない
相続税においては、その税額の計算上、基礎控除額や非課税枠が用意されていますが、これらはすべて法定相続人の数を基にして計算します。そして、法定相続人となる範囲は民法上で定められています。
まず、亡くなった人の配偶者は常に法定相続人となります。そして亡くなった人と配偶者との間に子どもがいた場合は、その子どもが第一順位の法定相続人です。つまり、配偶者と子どもで被相続人の財産を分け合います。
もし、亡くなった人と配偶者との間に子どもがいなかった場合は、亡くなった人の直系尊属である両親もしくは祖父母が第二順位の法定相続人となります。そして、両親および祖父母もいない場合は、亡くなった人の兄弟姉妹が第三順位の法定相続人です。
また、法定相続割合も順位ごとに異なり、第一順位の場合は、配偶者が2分の1、そして子どもが残りの2分の1を分け合う形になります。
第二順位である両親や祖父母が相続人となる場合の法定相続割合は、配偶者が3分の2、両親もしくは祖父母が3分の1を分け合います。
そして、第三順位である兄弟姉妹が法定相続人となる場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹は4分の1を分け合う形となります。
したがって、孫は原則として法定相続人にはなり得ません。
しかし、亡くなった人と配偶者の間に子どもがおり、孫もいた場合で、子どものほうが先に亡くなっていた場合は、「代襲相続」という形で孫が法定相続人になります。
孫が受け取った生命保険金の扱いは?
では、孫が受け取った生命保険金の取り扱いはどのようになるのでしょうか。
■非課税枠は利用できない
孫は原則として法定相続人にはなりません。したがって、受け取った生命保険金の非課税枠も利用できません。
たとえ受け取った生命保険金が200万円だったとしても、200万円に対して相続税が課税されることになります。
■孫の相続税は2割加算の対象
また、法定相続人以外が受け取った財産における相続税は2割が加算されます。したがって、孫が200万円の生命保険金を受け取った際の相続税額は、200万円×10%(相続財産1000万円以下の税率)×1.2=24万円です。
■保険料の負担者によっても異なる
ただし、保険料の負担者が亡くなった祖母ではなく、その子ども(孫からみた親)だった場合は、相続税ではなく贈与税の扱いになります。
その際は、暦年課税制度の非課税枠である110万円を超えた部分に、贈与税がかかります。
贈与税には2割加算のような制度はありませんが、相続税と比べ、贈与税のほうが税率は高く設定されていることから、最終的な税負担額が大きくなる可能性があります。
まとめ
相続人でない人を受取人とする生命保険金は、場合によっては相続税を多く負担する結果になりかねません。
もしも相続対策としての生命保険の活用を考えるのであれば、その受取人を誰にするかをきちんと考えておく必要があります。
また、もしも孫に財産を残したいのであれば、生命保険を活用するよりも生前贈与を活用するほうがよい場合もあります。
暦年贈与の非課税枠を利用し、110万円までの贈与を行うほか、教育資金や結婚・子育て資金贈与の非課税の特例などが用意されていますので、非課税特例を受けるための要件を満たすのであれば、それらの活用を考えることをおすすめします。
(※)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No. 4105 相続税がかかる財産
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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