年金の繰下げ待機中に亡くなったら年金はどうなる? 遺族が請求できるの?
ファイナンシャルフィールド / 2023年3月9日 4時40分
将来的に受け取れる年金額を増やす方法として、繰下げ受給があります。しかし、年金の繰下げ受給をしても、想定よりも早く死亡した際のリスクを気にする人もいるのではないでしょうか。可能であれば、遺族が代わりに受け取れればよいと考える人もいることでしょう。 本記事では、年金の繰下げ待機期間に死亡した場合の年金がどうなるのか、遺族が受け取れる未支給年金や遺族年金について解説します。
10年間で年金額を84.0%増やせる繰下げ受給とは?
年金の繰下げ受給とは、原則65歳から受給資格を得る年金を66歳0ヶ月以降75歳0ヶ月まで遅らせて受け取る制度です。繰下げ受給の1ヶ月あたりの増額率は0.7%で、70歳0ヶ月まで繰下げた場合は42.0%、75歳0ヶ月から受け取れば84.0%に年金額を増やせます。繰下げた期間が長いほど年金額が増えて、受給期間中に増額率が変わることはありません。
また、老齢年金のうち老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金(厚生年金)の同時繰下げもできますし、どちらか一方のみの繰下げも可能です。
年金の繰下げ待機期間に死亡した場合はどうなる?
年金の繰下げ待機期間に受給権者が死亡した場合、本人に代わって遺族に「未支給年金」が支給されます。年金を繰下げたために、本来受け取れるはずの年金を受け取れないといったことはありません。また、未支給年金以外にも、「遺族基礎年金」や「遺族厚生年金」の受給要件に該当する遺族がいれば、遺族年金の受け取りが可能です。
未支給年金が遺族に支給
未支給年金として遺族が受け取れるのは以下に該当する分の年金です。
●65歳から死亡するまでの年金のうち未受取分の年金
●死亡日以降に振り込まれた年金のうち死亡月分までの年金
例えば、受給権者が2月10日に死亡した場合、2月15日に12月、1月分の年金、死亡月の2月分の年金を未支給年金として受け取れます。また、受け取れる年金は65歳時点の金額で確定し、65歳から死亡時まで繰下げたことによる年金額の増額はありません。
未支給年金を受け取れるのは、受給権者が死亡した時点でその受給権者と同一生計であった遺族とし、優先順位は以下のとおりです。
1位:配偶者
2位:子
3位:父母
4位:孫
5位:祖父母
6位:兄弟姉妹
7位:その他3親等内の血族のうち、最も優先順位が高い人
未支給年金の受取方法は、年金事務所または街角の年金相談センターへ、受給権者死亡届と未支給年金・未支払給付金請求書を提出する必要があります。
遺族年金を受給できる
遺族基礎年金、遺族厚生年金の受給要件に該当する遺族がいる場合、遺族年金を受け取れます。受給要件と受給対象者は図表1のとおりです。
図表1
受給要件 | 受給対象者 | |
---|---|---|
遺族基礎年金 | 国民年金の被保険者期間に 死亡した 日本国内に住所を有していた60歳以上65歳未満の国民年金被保険者 ・老齢基礎年金の受給権者が死亡した ・老齢基礎年金の受給資格を満たした人が死亡した |
・死亡した被保険者に生計を維持されていた遺族(子のある配偶者または子) |
遺族厚生年金 | ・厚生年金保険の被保険者期間に死亡した ・厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがを理由に死亡した(初診日から5年以内) ・1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている人が死亡した ・老齢厚生年金の受給権者が死亡した ・老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡した |
・死亡した被保険者に生計を維持されていた遺族 ・以下のうち、最も優先順位の高い遺族 1位:妻 |
日本年金機構「遺族年金」より筆者作成
年金増額のメリットと死亡リスクを考慮して繰下げ時期を検討しよう
年金の繰下げ受給を選択し、待機期間中に受給権者が死亡しても、受給権者と同一生計であった遺族のうち優先順位の高い人が未支給年金を受け取れます。未支給年金として受け取れるのは、65歳から死亡するまでの期間に受け取れるはずだった年金です。その際に、繰下げ期間に対する年金額の増額はありません。
繰下げ受給を選択した場合、死亡時期が早まった場合は年金増額のメリットを受けられない可能性が高いです。自分の寿命や現在の貯蓄額などを把握し、何歳まで繰下げるのがよいか、繰下げ受給を行うのが適しているのかを検討してみましょう。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 公的年金の分かりやすい情報発信モデル事業 4.基礎編(制度編)詳細版 未支給年金【28】 「紙上Live講義 ~未支給年金~」
日本年金機構 年金を受けている方が亡くなったとき
日本年金機構 遺族年金
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
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