家族と揉めない為にも知っておきたい・話しておきたい 「相続」を「争族」にしない為の準備
ファイナンシャルフィールド / 2018年9月9日 0時30分
お盆やお正月は、遠くに暮らす家族が顔を合わせる数少ない機会。 親が元気なうちに、親や兄弟姉妹達と顔を見ながら話し合っておくことで、いざ相続が発生しても争いが起こりにくくなります。
「争族」は感情の問題
平成27年に相続税が改正され、相続財産から差し引ける基礎控除額が40%カットとなりました。仮に相続人が妻と子どもの二人の場合、かつて8,000万円(5,000万円+1,000万円×相続人の数)受けられた控除額が、4,800万円(3,000万円+600万円×相続人の数)になったのです。
ところで、基礎控除が下がることでなぜ相続争いが増えたのでしょうか?実は、税と争族とは関係ないのです。「争族」は相続財産の分割の問題だからです。
平成27年度のデータによれば、遺産分割事件で争うのは、5,000万円以下が75%、その内1,000万円以下が32%なのです。これが平成19年では、5,000万円以下が約73%、内1,000万円以下が29%でした。1,000万円以下の争いが増えているのです。
うちは財産なんてないから、相続は関係ないと言う場合も、相続税には関係なくても僅かな分の取り合いが起こるのです。
話し合っておくのは、事が起こる前に
通常、事が起こる前に決めておくことは難しいですね。何も起きてないときは危機感が無く、なかなか動こうとしないものです。相続? うちは仲が良いから争うなんて考えられない。
今は仲が良いかもしれませんし、仲が良いと親は思っているかも知れません。
子どもの法定相続分は頭数で均等に割りますが、兄弟姉妹の内の誰かが特別に何かしてもらったとか、誰かが特別に親のためにしたとか、親との関わりが均等でないのに、均等で分けるのは不公平だとなるのです。
どの子も同じように育てたと思っていても、全く平等にはできないもの。気をつけていても不平等感は出てしまいますが、わざと差を付けた接し方をすればなおさらです。
例えば、一人だけ家の頭金を出して貰ったとか、私学に通わせて貰ったなどの「特別受益者」である場合、「特別受益の持ち戻し」をします。相続財産に、既に贈与を受けた人の分を戻しで、改めて分割します。しかし、結果的に一人だけ特別扱いされたようになった場合でも、そうなるに至った事情があったかもしれません。
ちゃんと話すことで、初めて分かることもあるかと思います。
終活ノート(エンディングノート)も伝える手段だけれど
終活という言葉は、2009年に週刊朝日で使われたのが最初だといわれます。数年ほど前は「縁起でもない!」といわれていましたが、ここ数年で、かなり受け入れられてきました。
終活とは、残された家族が困らないよう、お墓の準備をする、お葬式の準備をするといったような身辺整理をするだけではなく、今まで生きてきた人生の棚卸しをすることで、これからをより良く生きていくための活動です。
その手段として、終活ノート(エンディングノート)があります。
自分が万が一の時の連絡先などの記録を残すだけでなく、自分の人生の棚卸し、自分が生きた証、そして思いを書く事ができます。何度も書き直すことができますし、決まり事はありません。書きたい事から書けば良い。
しかし、話し合いが面倒だから終活ノート(エンディングノート)に書いておいて、後でノートを見つけてもらえば良いと思われるかも知れませんが、やはり、家族の良い関係ができていないと、ノートに記しても思いは伝わりにくいものです。まず、家族で話し合える関係性があることが大切です。
ところで、終活ノート(エンディングノート)には法的効力はありません。相続については遺言書を作成しましょう。公正証書遺言が安心ですが、平成30年7月5日に法務局における遺言書の保管等に関する法案(平成30年法律第73号)が成立しました。自筆証書遺言でも、勝手に開封される改ざんされる等がなくなるのです。
平成30年7月13日に交付され2年以内に施行されますが、施行前には法務局に保管の申請は出来ませんのでご注意ください(法務局HPをご覧ください)。
Text:林 智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
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