スーパーで子どもが「刺し身のパック」をつついて穴だらけに! 店から「買い取ってほしい」と言われましたが、本当に買い取る義務はありますか? 新しいパックに包めばまた販売できると思うのですが…
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月12日 4時30分
小さな子どもを連れて買い物をするのは親にとって大変なことです。少し目を離したすきに、子どもが売り物を触って傷つけるなど思わぬトラブルを引き起こすこともあるでしょう。子どもが商品を触って傷つけてしまった場合、どのように対処すれば良いのでしょうか? 本記事では、子どもが店の商品を傷つけたときの買い取りの必要性などについて解説します。
子どもの責任は誰にある?
子どもが店の商品を傷つける、他人の物を壊すなどの損害を与えた場合、その責任は親が負わなくてはいけません。
民法第712条では、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない」と定められています。
「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」は責任能力とも呼ばれ、一般的には12歳前後が境界線といわれています。つまり12歳頃までの責任能力のない子どもは、責任を負う必要がないということです。
その一方で、同法第714条では「責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と定められています。「責任無能力者を監督する法定の義務を負う者」とは親権者のことで、今回の例でいうと「子どもの親」に該当します。
つまり子どもが店の商品を傷つけるなど何らかの損害を与え、かつ子どもに責任能力がない場合、責任をとるのは子どもではなく親ということです。
商品を買い取る義務はある?
店の商品を傷つけるなどの損害を与えたときは、商品を買い取る義務というよりも、「商品と同じくらいの金額を賠償する」という義務が生じます。
民法第709条によると「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」とされています。
商品を傷つけ利益を侵害すると、その商品の代金分の損害を賠償しなければならないということです。例えば1000円の商品を傷つけたら1000円を、300円の商品を傷つけたら300円を賠償しなければなりません。
傷ついた商品を店側が傷つけた相手に渡すこともあるため、実質的に買い取るような形になるのです。
中身に触れていなくても買い取る姿勢が大切
店が「買い取ってほしい」と求めてきたということは、「売り物にならない」と判断したということです。もし食べ物そのものに触れていなくても、買い取る姿勢を忘れないようにしましょう。
買い取りは義務ではないため、納得できないのであれば買い取りを拒否できます。例えば子どもが商品に少し触れた程度などであれば、買い取りを求められて不満に思うこともあるかもしれません。
しかし、刺し身を包んだフィルムの穴が空くほど触ったのであれば、客観的に見て「商品に損害を与えた」といえるのではないでしょうか。刺し身そのものに触れていないという証明もできません。衛生面を考慮しても、店はその刺し身を包み直して再度販売することはないでしょう。
「包装を傷つけただけで中身は大丈夫」「ちょっと形が崩れただけ」と身勝手な解釈はせず、全額弁償する意思を伝えることが大切です。
誠意のある対応を心掛けよう
商品を傷つけた側が「子どものしたことだから許されるべき」と無責任な態度をとってはいけません。法律上では子どもの責任は親が負うこととなっています。
まずは商品を傷つけたことを謝罪し、弁償する意思を伝えましょう。もし商品の中身に触れていなかったとしても、商品の代金の全額を支払うつもりでいた方が賢明です。買い取りを申し出ても店が辞退した場合は、後日おわびの品を持参すると良いでしょう。
子育て世帯にとって、買い物時のトラブルは避けられないものかもしれません。ただ子どもがトラブルを起こしたときに親が誠意を持って対応することで、子どもにとって善悪の区別がつくなど良い教育になることも考えられます。問題をごまかさずにきちんと向き合う姿勢が大切です。
出典
e-Gov 法令検索 民法
執筆者:山田麻耶
FP2級
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