契約したものを解約したいのですが電話がつながりません。日にちが経過したらクーリング・オフできないのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月30日 9時20分
契約したものを、解約したいと思われるときもあると思います。しかし契約は、原則として、解約したいからといって解約できるものではありません。このため、契約をするときには十分な注意が必要です。 一方で、購入者を保護するためにクーリング・オフという制度があります。一定の期間内であれば、無条件に契約の申し込みを撤回したり契約を解除したりできるという制度です。しかし、クーリング・オフについてきちんと理解していなければ、この制度による保護は受けられません。 本記事では、クーリング・オフ制度の概要と、クーリング・オフ制度以外で契約を取り消すことができる場合について解説をします。
クーリング・オフの概要
先述のとおり、クーリング・オフは、一定の期間内であれば無条件に契約の申し込みの撤回や契約の解除などができる制度です。この制度の目的は、契約を再考する期間を設けることで、購入者などの損害を防止したり利益を保護したりすることです。
クーリング・オフは「特定商取引に関する法律(特定商取引法)」を根拠法としており、この法律によって、クーリング・オフができる取引や期間、クーリング・オフの手続きが規定されています。
特定商取引法における、クーリング・オフができる取引と期間は図表1のとおりです。なお、通信販売にはクーリング・オフ制度がありませんので注意が必要です。
図表1
取引 | 期間 |
---|---|
訪問販売(キャッチセールス、アポイントメントセールスなど) | 8日間 |
電話勧誘販売 | 8日間 |
特定継続的役務提供(エスティックサロン、学習塾、語学教室など) | 8日間 |
訪問購入(家具・大型家電の買い取りなど) | 8日間 |
連鎖販売取引(マルチ商法) | 20日間 |
業務提供誘引販売取引(内職商法、モニター商法など) | 20日間 |
※ 筆者作成
クーリング・オフができる取引の場合、販売者・サービス提供者は申込者・購入者に対し、申込書面または契約書面を交付しなければなりません。クーリング・オフの「期間」は、申込書面・契約書面を受け取った日から数えます。
クーリング・オフの手続きは、所定の期間内に書面または電磁的記録で行います。電話をする必要はありません。はがきなどに書いて通知するだけで、クーリング・オフの手続きができます。手続きをする際には、以下のように記録や証拠を残しておくことをおすすめします。また、取引時にクレジット契約をした場合は、クレジット会社にも同様の通知をする必要があります。
●書面で手続きをする場合:コピーを取っておく、特定記録郵便や簡易書留を利用するなど
●電磁的記録で手続きをする場合:メールを保存しておく、スクリーンショットを取っておくなど
消費者契約法により契約を取り消せることもある
クーリング・オフができる期間が過ぎてしまった場合、基本的には、クーリング・オフはできません。しかし、絶対に契約を取り消すことができないかというと、そうではありません。まだ契約を取り消せる可能性はあります。
例えば、前章で少し触れた販売者・サービス提供者から交付される申込書面・契約書面の記載内容に不備があるときは、所定の期間を過ぎていてもクーリング・オフできる場合があります。
また、クーリング・オフ制度(特定商取引法)とは別に、消費者を保護するための法律として「消費者契約法」があります。この法律により、クーリング・オフ期間が過ぎてしまった場合やクーリング・オフができない契約であっても、場合によっては契約を取り消すことができます。
例えば、以下のような場合、消費者契約法により契約を取り消すことができます。
●事実とは異なる説明をされ、誤認して契約した場合
●不確実なことを断定的に説明され、誤認して契約した場合
●不利益なことを伝えられず、有利なことだけを伝えられ、誤認して契約した場合
●訪問販売業者に対して「帰ってくれ」と言っても帰ってもらえず、契約せざるを得なかった場合
●店で「帰りたい」と言っても帰らせてもらえず、契約せざるを得なかった場合
まとめ
本記事では、クーリング・オフ制度の概要と、クーリング・オフ制度以外で契約を取り消すことができる場合について解説をしました。
ここでのポイントは、クーリング・オフは必ず書面(または電磁的記録)で行うということ、手続きの記録・証拠を保管しておくということです。慌てて電話をかける必要はありません。落ち着いて行動しましょう。
クーリング・オフができる期間を過ぎてしまっても、クーリング・オフができる場合や契約を取り消せる場合があります。前者は販売会社などから交付された申込書面・契約書面に不備があったとき、後者は消費者契約法に触れる契約をしたときなどが考えられます。
「契約は、よく考えた上で行わなければならない」ということを承知していても、「契約をさせられる」ということが避けられないときもあるかもしれません。そのようなとき、本記事の内容を少しでも思い出していただければ幸いです。
出典
独立行政法人 国民生活センター 「クーリング・オフ」
公益社団法人 全国消費生活相談員協会 「クーリングオフ」
e-Gov法令検索 「特定商取引に関する法律」
消費者庁 「消費者契約法」
消費者庁 「消費者契約法による契約の取消し」
e-Gov法令検索 「消費者契約法」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
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