「家族信託」の相談をしましたが、わが家は「利用できない」とのこと。母の認知症が心配だから相談したのに……。家族信託は「認知症対策」なのではないのですか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月10日 1時40分
親が高齢になると、将来認知症を発症したときの財産管理対策を検討する必要性が高まります。認知症対策のひとつとして家族信託の存在を知り、魅力を感じている人もいるでしょう。 気を付けなければならないのは、家族信託の検討や手続きを行うタイミングです。本記事では、家族信託の特徴や認知症発症後の利用が可能かどうか、家族信託に代わる財産管理対策の手段について解説します。
家族信託とはどのような制度?
家族信託とは、自分の財産を信頼できる家族や第三者(受託者)に託して、あらかじめ契約で定めた目的にしたがって管理や処分、継承などを行ってもらう仕組みです。
認知症などによって自分では財産管理ができなくなった場合や、自分の死後の財産の使い道に不安がある場合などの対策として注目されています。本項では、家族信託のメリットや利用方法を簡単に説明します。
家族信託を利用するメリット
家族信託の大きなメリットは、家族や親族など、信頼できる身内に財産の管理を任せられる点です。成年後見制度の場合は、家族が後見人になれるとはかぎりませんが、家族信託であれば可能です。
また、認知症の発症前から契約を発効できること、財産の管理権限が受託者に移ることで、本人の認知症発症後も預金の引き出しや不動産の売却といった財産管理をスムーズに行えることなど、成年後見制度と比べて柔軟性が高い点もメリットだといえます。
また、遺言機能もあり、死後の財産継承や遺言書では不可能な2次相続以降の指定も可能です。
家族信託の利用方法
家族信託を利用するには、信託契約の内容を決め、契約書を作成することが必要です。契約の内容によって家族信託の有用性が左右されるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談するとよいでしょう。
契約書を作成したら公証役場で公正証書にし、法的な証明力を担保しましょう。契約書を公正証書化したら、信託財産専用の口座(信託口口座など)の開設や、不動産の所有権移転登記や信託登記などを行い、財産管理の体制を整えます。
財産管理の準備が整ったら、受託者の権限と帳簿作成・報告の義務のもと、信託契約にしたがって財産の管理がスタートします。
【注意】家族信託は認知症で意思能力が低下すると利用できない
家族信託は認知症対策として有用ですが、本人が認知症を発症して判断力が低下した後では利用ができません。なぜなら、家族信託を利用するには、本人と受託者の間で信託契約を締結しなければならず、当事者に契約を結ぶのに十分な意思能力があることが必須だからです。
ただし、認知症を発症したら絶対に家族信託を利用できなくなるわけではありません。認知症の程度が軽度で、医師から意思能力があると判断された場合は、公証人の立会いのもと、家族信託の契約を結べる可能性があります。
軽度認知症の段階で信託契約を結ぶ場合は、高度な判断能力を要しない、できるだけ簡素な契約内容にするとよいでしょう。
認知症発症後に財産管理対策をするには成年後見制度の利用が必要
認知症になると、口座凍結や不当契約、詐欺などのリスクがあり、財産管理の対策は不可欠です。認知症を発症し、意思能力が低下した後で財産管理対策が必要となった場合、選択肢は家庭裁判所が選任した後見人等が本人の保護・支援に当たる、成年後見制度(法定後見制度)に絞られます。
成年後見制度を利用すると、本人の望まない人が後見人になる可能性や、財産の積極的な運用などが難しくなるといったデメリットがあります。本人や家族の意思を最大限に反映した財産管理を望むのであれば、高齢になり認知症の発症リスクが高まる前に、早めに家族信託などの対策を家族で検討する必要があるでしょう。
家族信託を検討するなら親が元気なうちに話し合おう
家族信託は、信頼する家族に財産管理を任せられ、認知症発症後でもスムーズで柔軟な財産管理を可能にする制度です。ただし、認知症を発症し、症状が進行してしまってからでは、利用するのが難しくなります。
家族信託の利用を検討している場合は、親がまだ元気なうちに希望を聞き、どのようなかたちで希望に沿う財産管理を実現するのか、専門家の手も借りながらよく検討しましょう。
出典
神戸地方法務局 兵庫県司法書士会 ~相続で未来へ~ わたしのエンディングノート 第2部 相続で未来へつなぐ 「争族」にならないために知って安心 家族信託とは?
法務省 成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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